映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』評価・ネタバレ感想! 自分の人生とリンクする瞬間があればあるほど面白い

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先に公開された海外でアニメ映画史上最高記録を叩き出したという話を聞いても「ほへ~」としか思わなかった。私はマリオに一切思い入れがないのである。小学生の時にニンテンドーDSが発売され、その初回タイトルにマリオもあった。しかし私は「横スクロールアクションなんて面白いわけないだろ」と高を括り、むしろマリオのゲームに対して消極的な印象すら抱いていたのである。

Wiiを買い、兄弟の誘いでマリオカートWiiをプレイしたが、あまり面白さは分からなかった。流れでマリオパーティをプレイもしたが、友だちとのプレイでなければ盛り上がることは難しい。マリオのゲームのCMでは楽しそうに笑う家族やグループが映し出されるが、ゲーム仲間のいなかった私にとって、マリオは遠い存在だったのである。

 

大学生になってNintendo Switchを購入した。当時は在庫もほぼなく転売も横行していた時期。購入のために列に並んだり通販サイトを巡回したりという手間が大嫌いな私がSwitch探しに躍起になったのは、「スーパーマリオ オデッセイ」をプレイしたかったからである。恥ずかしながら当時の私は「スーパーマリオ64」などの作品のことを全く知らず、マリオと言えば横スクロールかパーティーゲーム、オデッセイはそれに該当しない初めての作品だなどと勘違いし、テレビでCMを見かける度にどうしてもプレイしたいという思いが増していった。

それは自分からずっと遠い存在であったマリオに、ようやく近づくことができるかもしれないという淡い期待もあったのかもしれない。ゲームキャラクターどころか、日本のキャラクターの代表にまで上り詰めていたヒゲヅラ男と、ほとんど関わることのなかった私の人生が、Switchを購入してから大きく動き出した。オデッセイの面白さに取りつかれ、講義への出席はどんどん疎かになっていく。1周クリアした後に各ステージのパワームーンを網羅しようとするのだが、これが全く見つからない。ゲームセンスのない私にはヒントがヒントですらない。結局はスマホ片手にちまちまパワームーンを回収するだけの、作業ゲームとなってしまった。それでも、ここまで心を動かされたゲームは人生においても本当に数えるほどだったのだ。

 

その後Switchにて期間限定で発売された過去のマリオ3Dゲーム3作品が入ったものを購入し、「スーパーマリオ64」もクリア。それからもちまちまそのゲームに入った「スーパーマリオサンシャイン」をプレイしている。今思い出したが、そういえばマリオカート8も買っていた。

 

なぜこんな風に自分のマリオ遍歴をつらつらと語ったかというと、この映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』がそうさせたからである。ほぼマリオを知らない私でさえニヤニヤしてしまう描写のオンパレード。映画を観たら「自分とマリオ」についてずっと考えてしまうだろうし、観賞した全員のマリオ遍歴を聞いてみたいくらいである。それほどまでに「マリオ映画」だったのだ。余分なものが一切入らない、純度100%のマリオ。それでいてキャラクター性に凭れ掛るだけでなく、芯の通った物語が90分少々という肩の力を抜いて鑑賞するにはちょうど良いタイムで展開される。大作映画がだんだんと2時間を超えなきゃ許されないのか?というレベルで長丁場になっていくこの2020年代に、90分少しの元気なアニメ映画があるのは本当に嬉しい。

 

とまあ長くなってしまったが、ここからようやく映画の話に入りたい。

マリオの映画と聞くとやはり『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』が有名だろう。アメリカの実写映画で、90年代らしさを存分に感じられるアクションコメディ。私はこの映画が結構好きなので、これを機にまた話題になってくれると嬉しいなと思う。

この映画はマリオとルイージ異世界に行って…というところから物語が始まるのだが、まさか今回のアニメ映画も同じ導入だとは全く予想していなかった。マリオとルイージは私たちが暮らす地球の住人で、アメリカのブルックリンに住む兄弟。そもそものマリオの設定がそうなのだろうか…。そういうところにも疎いから全く分からないのだが、そんな異世界でマリオが願うのが「ルイージを救って一緒に帰る」なのが本当に良かった。

 

 

 

 

これも個人的なイメージに過ぎないのだが、マリオの隣にいる存在としてはピーチ姫の方が印象が強い。クッパにさらわれたピーチ姫を配管工のマリオが助ける。その英雄譚がスーパーマリオシリーズの根底だと私は思っていた。しかし本作でヒロインの役割を担うのはルイージ。どこまでもルイージ。圧倒的にルイージ

臆病者で気が弱く、兄のマリオがいなければ何もできない弟。ルイージマンションやったことないけど、いっつも何かにビビっているイメージは確かにある。そんなルイージ異世界でマリオとはぐれ、クッパに捕まり、いきなり落ちたらマグマの檻に閉じ込められる。元は普通の少年なのだ。その恐怖はとても強いものだろう。そしてその恐怖を彼は隠そうともしない。ひたすらにビビり続ける。マリオを求め続けるのだ。

 

対してマリオは決してあきらめない。これは多分ゲームのシステムでいう「残機」を表しているのかなあと思った。何度でも挑戦できるを、決して諦めないとして捉える手法が見事で、マリオ自体が強いわけではないのだけれど、「絶対にルイージを救う」という強い意志だけで、もう好感が持ててしまう。そもそもマリオなんて知らない人間の方がいないだろうに、まるで初出のキャラクターとでも言わんばかりに、行動動機・理念がしっかりとしている。任天堂が積み重ねてきた歴史に胡坐をかかず、リスペクトを何より重視し、とことん面白いものを作ろうという制作陣の気持ちが強く伝わってくる。

 

マリオが普通の少年であることを考えると、いきなりキノコだらけの世界に飛ばされ、躊躇なく体当たりや樽投げをしてくるゴリラと戦わされる恐怖は、相当のものだったはずだ。その辺りも個人的にはぐっと来てしまった。まるで勝手の違う異世界に飛ばされても、「ルイージを助ける」という一心でどんなことにも果敢に挑む姿勢は、正にヒーローそのもの。ネコマリオタヌキマリオなどは「パッケージで見た!」という既視感でニヤニヤしてしまう。これもし該当のゲームをプレイしていたらもっと感動しただろうなあと、落ち込みもした。マリオを知っていれば知っているだけ加点できる映画なのだと思う。

 

そしてルイージがヒロイン役を担うことで、ピーチ姫は大暴れが可能となった。ひたすらに「強い女性」として活躍し、マリオをサポートし続ける。クッパが惚れ込むのも分かるし、この映画では「かっこいい女性」がやるムーブをひたすらこなし続ける。そういうスター集めてるんですか?というくらいにかっこいいのだが、決して主役を食ったりはしない。護られるなんてスタンスは彼女には毛頭なく、むしろ自分で状況を変えようと動けるとんでもないお姫様。氷のキノコ食べてクッパに挑むシーンは本当に良かった。

 

マリオが異世界で初めて出会うキノピオもいい。コメディキャラクターとしてしっかりと機能していた。そしてドンキー。マリオをいけ好かない奴と思いながらも、実力は認めている…という最高のポジションをこの猿が担う。あとドンキーがマリオに対して放った「オーバーオール男」(吹き替え)というフレーズがすごくツボだった。確かに男性でオーバーオール着てるのって石塚さんくらい。それなのに日本のアニメキャラクターを代表するマリオが平気でオーバーオール着てるのすごく面白い。それにマリオに対してヒゲや帽子ではなくオーバーオールに着眼するのが、個性も垣間見えてよかった。そもそも自分はネクタイしかしてないのにね…。そしてラストのマリオとドンキーの共闘は、嫌でもテンションが上がる劇薬。演出も音楽もすべてが神がかっている。予告で観た時から期待していたが、実際に観るとあまりによかった…。

 

 

 

 

話をルイージに戻したい。予告で対クッパの映像が一切出ていなかったので何かしらのサプライズがあるのかなあと予想していたが、やはり最終決戦がブルックリンというところは隠したかったのだろうか。街にクッパが表れ、マリオも絶体絶命のピンチ!そこで勇気を振り絞り前に出てきたのが、ルイージ。あ~もう絶対に来ると思っていた。お前が助けてしか言わないヒロイン枠で収まるわけがないと確信しながら観ていたよ~という大きな気持ちで彼の勇姿を迎え入れたわけである。もうマリオに向かって火が吹かれた辺りで私はだいぶ涙ぐんでいた。

 

この映画はスーパーマリオ”ブラザーズ”なのだ。この兄弟の物語が話の軸なのである。マリオがルイージを想う気持ちから大冒険が始まり、自分をいつも護ってくれた兄のピンチに、小心者のルイージが勇気を奮い立たせる。マリオだって弱いはずなのに、キノコを使って何とか仲間を揃え、ここまで来たのだ。ルイージにそれができないはずがないし、何より兄に守られてばかりだった彼が兄と肩を並べるところにまで昇ってきたことに感動してしまう。

スターを取り、無双し、ダブルライダーキックでクッパを撃退。なんかもうこの辺りは目がうるうるしすぎて覚えていない。『シン・仮面ライダー』でダブルライダーキックを拝めたかと思ったらマリオとルイージまでやってたので驚いたのは鮮明に記憶している。

 

という感じで、もうマリオとルイージの互いを想う気持ちに感動させられっぱなしだった。後ギミックなどでいうと、マリオカートの1位に向かってくる水色の羽つき甲羅。あれが「おのれ!マリオめ!」みたいな感じで敵の1体が暴走して襲ってくる上に、それがマリオ達分断の決定打になることに、うわああああああと叫びそうになった。あの甲羅に何度もマリオカートで舌打ちしてきたので。マジで許せなかった。

 

という風に自分の辿ってきたマリオ遍歴と映画がリンクする瞬間がたくさんあるであろうこの映画。きっとマリオを知っていれば知っているだけ拾えるポイントも多くなり、楽しめるのだと思う。

 

マリオカートレインボーロードで初心者の友達に負けたとか。

スターが取れずに何時間も同じステージを繰り返す羽目になったとか。

スマブラでドンキーのジャンプBばっかり使ってきてうざいとか。

 

まあこれは捏造した記憶だけども、そういう細やかな瞬間の一つ一つが鮮明に思い出せてしまうくらい、たくさんのものが詰め込まれている。

 

でもマリオを知らなければ楽しめないかというと、そういうことでは全くない。何度でも観たくなるし、何度でもマリオとルイージに勇気をもらいたくなる。そしてゲームがやりたくなる。もう見事にイルミネーションや任天堂の策略にハマってしまう。

映画館のあるデパートのゲーム屋さんではマリオ棚が展開され、「さあさあ映画鑑賞後に買いなさいよ」と言わんばかり。入場特典もひとまず全4種でリピートする楽しささえ用意されている。あと何機使えばいいんだ…。

ひとまず今回の特典がピーチだったので、ルイージが出るまで粘りたい。

本当に面白い映画だった。