映画ドラえもん全作感想 第2作『映画ドラえもん のび太の宇宙開拓史』

映画ドラえもん のび太の宇宙開拓史

 

 

いつも『のび太の恐竜』を観ただけで満足してしまう映画ドラえもん全作完走計画なのだが、1作目の感想をしっかりとブログに落とし込んだことで、何とか意欲を保つことに成功した。2作目の『のび太の宇宙開拓史』、ポスターの「面白さパワーアップ!」に全く偽りがない。幅広いオリジナルキャラクターが登場し、世界観が深まり、とにかく面白い。『のび太の恐竜』はピー助こそ出てきたものの、ゲストキャラが少なく、のび太とピー助の友情以外は、どこか「いつものドラえもん感」もあった。だが、『宇宙開拓史』はゲストキャラクターの数と魅力が2作目にして既にとんでもない。2作目にして早くも「傑作では?」と思ってしまった。

 

まず部屋の畳が遠い宇宙と繋がってしまうという出だしが最高。そこには大きな意味はなく、それ自体はほぼ偶然の産物なのだが、そういう「日常から一気に異次元へ」という、まさに「少し不思議」なアイデアにもうワクワクしてしまう。徐々に畳と宇宙船との繋がりが消えていってしまうことに名残惜しさを覚えていくようになる。

 

ロップル達と出会う前の、ジャイアン達の理不尽さも良い。中学生に空き地を取られてしまったから取り返してこい、ダメだったなら野球ができる空き地を探してこい。これはさすがに酷い。『のび太の恐竜』ではのび太が自分から「恐竜見せてやるよ」と啖呵を切ったために自分で頑張ろうとする姿が印象的だったが、今回はジャイアンスネ夫があまりにいじめっ子すぎる。それでもラストで締めるところはきちんと締めるからすごい。映画になると良い奴になるジャイアンは幾度となくネタにされるが、今回は最初の理不尽な押し付けもあるので、五分五分といったところだろうか。

 

この映画の良いところはやはり、「のび太がヒーローをしている」という点にあると思う。彼の射撃の腕がしっかりと描かれ、重力の異なるロップルの宇宙では、のび太ドラえもんはスーパーマンとして活躍することができる。それゆえに巨悪に星ごと滅ぼされようとしているロップル達に助けを請われ、友達を助けなくちゃというのび太の正義感が強調される。のび太を待つロップル達が、『ドラゴンボール』において悟空待ちをしているZ戦士にしか見えない。とにかくこの「のび太が来た!」に救われる瞬間というのが気持ち良いのだ。

 

そしてロップルをはじめとしたゲストキャラクターもなかなか厚みがある。特にボーガントに畳と宇宙船の繋がりを話してしまったブブ。ぽっちゃりで人を馬鹿にする、「いかにも」という脇役キャラなのだが、彼がボーガントに話してしまったことを悔いて、ジャイアン達に助けを求める展開がアツい。しかも「僕のせいなんだ」という弁解に対して、初対面のしずかちゃんが「やったことは仕方ないわ」みたいな言葉をかけるのも素晴らしい。ゲストなのにきちんと人間としての背景が描かれているし、こういう正義とはズレてるキャラクターがいるのは、すごくバランスが取れているような感じがある。

 

ただ、宿敵っぽく出てきたギラーミンが大した活躍もなくやられてしまったのは残念。調べると大長編ではのび太と戦うらしいが、映画では洪水に巻き込まれた挙句いきなりロップルに撃たれて終わってしまう。どう見ても雇い主を裏切ってラスボスになるキャラクターのデザインをしているのに、なぜあんなにもあっさりとやられてしまったのか…。見た目と言動だけで十分にキャラが立っていたからこそ、非常に残念でならない。

 

後はのび太とロップルの交流もすごくテンポがよく、共に勉強したり、あやとりを教えたり、四季を楽しんだり。そういった何気ない瞬間の一つ一つが、のび太達のひと夏体験みたいな哀愁が漂っていて、とにかく好き。あ~きっとこの映画の最後はのび太とロップルの別れで終わるんだろうなという予想をさせつつも、そこに向かってしっかりと感情を作ってくれる名演出。ピー助とのび太の友情も良かったが、『宇宙開拓史』を観た後だと全然弱く感じてしまうから不思議だ。

 

最後のタイムふろしきの使い方も、伏線がしっかりと聞いてて上手いなあと思わず唸った。救命イカダはもっと良い道具が絶対あるだろって感じだし、夢たしかめ機は完全なネタ道具だったが。他にもワープの原理だったり、取っつきにくくない程度にSF要素もしっかりと散りばめられていて、世界観が固まっているのも素晴らしい。そんな世界で令和ではメジャーな「俺TUEEEE」をやっているのび太ドラえもん。力関係がいつもと異なることで、普段のドラえもんとはまた違った緊迫感がある。とにかく「スケールの大きさ」の一言に尽きる映画だった。

 

ジャイアン達のあっけない手の平返しも結構好き。彼等が一つになるというだけでもう泣けてしまうので、理不尽な空き地探しをさせてたとかは一旦置いておいて、のび太が友達のために頑張って戦ってるなら俺たちも行くべきだろ!とノータイムで判断できる彼らの脳みそが俺は大好きなんだよ…。映画では良い奴のジャイアンを堪能できたのが嬉しい。まあ空き地の件はマジで頭おかしいけども。

 

2作目にしてもうめちゃくちゃ面白いので、正直3作目は大丈夫か…?という感じなのだけど、これくらいのクオリティがずっと続くならこれまで映画ドラえもんにほとんど触れてこなかったことを後悔しそうな勢いである。