映画ドラえもん全作感想 第1作『映画ドラえもん のび太の恐竜』

映画ドラえもん のび太の恐竜

 

映画ドラえもんは年に1作が公開ペース。つまりはこちらが何もしなくても増え続けるのが映画ドラえもん。私は片手で数えられる程度しか鑑賞できていない。日本の映画界を支えるシリーズに対してこの無礼な態度はまずい。ということで、1作目『映画ドラえもん のび太の恐竜』から順に鑑賞し、ちまちま感想を書き続けていこうと思う。途中で力尽きてしまう可能性は大いにある。

 

しかしどうやら40作以上あるらしく、1日1作の鑑賞でも1ヶ月掛かってしまうことが判明した。それに確か「ドラ泣き」で有名な『STAND BY ME ドラえもん』も2作あったはず。非常に長い道のりになる予感がしている。

実はこの映画ドラえもん完走チャレンジなる試みを私は何度もしていて、その度に1作目『のび太の恐竜』で挫折している。観る度に新鮮味は失せていくわけだから当然なのだが、どうしても『のび太の恐竜』から何かを感じ取ることが難しくなってしまっている。私の思う映画ドラえもんの基本フォーマットがこれ、という感じなので、あまりに普通すぎて言えることがないのだ。

 

そういった個人的な事情もあり、全作の感想をと大言壮語を口にしながら、既に心が折れそうになっている。だが、誰かに頼まれてやっているわけでもないのにその態度はあまりにドラえもんに失礼。それに、1作目を乗り越えなければ2作目を観ることはできない。今回、もう4度目くらいになる『のび太の恐竜』。雑ではあるが、簡単に感想を述べていこうと思う。

 

本来なら今年の新作『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』に間に合うようにしたかったのだが、もう2日後に迫っているのでどう考えても不可能なので、ゆるくやっていくことにした。

 

平成生まれの私にはリメイク版の『のび太の恐竜2006』の方が馴染み深いが、毎回全話感想を1作目で挫けているせいで、『のび太の恐竜』の方が鑑賞回数は多い。そして観る度に、のぶ代ドラだあという強い感動に襲われる。

 

スネ夫に恐竜の化石を自慢されたのび太が、「もっとすごいの見せたるぜ!無理なら鼻でスパゲッティを食べてやるよ!」と大層な事をその場のノリで言ってしまい、スパゲッティを鼻で食べたくないのび太がとにかく頑張る、というのがこの映画のスタート。そしてこの、「鼻でスパゲッティを食べたくない」という思い(しかも自分から言い出したのに…)が、いつの間にか共に暮らしたピー助との友情に移り変わっていくグラデーションが映画のキモである。

 

また、この映画で強調されるのはのび太の自主性。本物の恐竜を見せつけてやる!という歪な欲望で生き物を買うことは許されないと思うが、一般的にダメ人間ののび太が自分の意思で地層を調べ、現地に赴き、化石を発見する。まあ失敗に終わるだろうと予想しながらも、タイムふろしきを落としていくドラえもんの粋な計らい。そして自分で育てたピー助は、彼にとって本当に大切な存在となるのだ。

 

順調に育ってしまったことで、家に隠せるサイズで無くなってしまったピー助。そのために近くの池で暮らしてもらうことになるのだが、世間で話題になり、新聞やテレビで取り上げられるまでになってしまったことから、いよいよのび太はピー助を白亜紀に戻す事を決意する。

別れたくないという気持ちでもなく、スパゲッティを鼻で食べなきゃいけないという思いでもなく、のび太はピー助の、友だちの未来に思いを馳せることができたのだ。でもスモールライトで縮めるって方法があるならずっと縮めて家で飼っておけばいいだろとも思ってしまう。スモールライトって制限時間とかあるのかな。

 

そこに恐竜ハンターなる「いかにも」な悪役が登場。更に白亜紀に送ったと思ったピー助も、まるで違う場所に送ってしまったために、ひとりぼっちに。それを知ったのび太ジャイアン達も連れてすぐに白亜紀に戻るが、タイムマシンの故障により、のび太達は帰れなくなってしまう…。

帰れないことの寂しさや故郷を思う気持ち、みたいな演出はあまりない。スネ夫なら「ママー!」と大泣きして場を乱すくらいのことはしそうだが、この『のび太の恐竜』で重要なのは「自主性」。どうしようもない状況でどう動くかという点に重きが置かれる。いつもは自分たちの街でひみつ道具に翻弄されるだけの面々が、各々考え、助かるために力を尽くす。偶発的な事故とはいえ、子どもたちの勇気が物語をどんどん引っ張っていく。そこに恐竜ハンターなる悪役がいて、ピー助とのび太の友情がある。なるほど、大長編や映画に相応しい、スケールの大きい話である。

 

調べると『ジュラシック・パーク』のスティーブン・スピルバーグもこの映画を何度も観ていたとか。恐竜といえばティラノサウルスというイメージは強いが、その源流がここにあったのかという驚きもある。ティラノサウルスのおどろおどろしさもしっかり強調されており、彼が味方になる展開もアツい。フタバスズキリュウに加え、プテラノドンまで登場と、少年心をくすぐる多くの恐竜達の登場も嬉しい。

 

総じて言うと、本当に「よくできているなあ」という感想である。グッと心を鷲掴みにしてくれる展開やフレーズこそなかったものの、全体的な流れが非常にスムーズで、恐竜ハンターやタイムパトロールなどの登場で世界観も広がりを見せている。何より普段は流されるだけのぐうたらなのび太が自主的に動き、ピー助との関係を感動へと結びつけるのが良い。いや、映画ドラえもんほとんど観てないので、「全部そうだよ」と言われたら何も返せないのだが。

 

改めて観ると、普段のドラえもんと違う特別感とボリュームだけで充分満足できる作品。逆に言うと、映画としての基本がしっかりしすぎていて、もうちょっと遊びの幅が欲しかったなあという気持ちもある。