機界戦隊ゼンカイジャー感想② 第5カイ~第12カイ

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最終回に間に合うように『機界戦隊ゼンカイジャー』という素晴らしい作品を振り返ろうと第4カイまでの感想記事を書いたはいいものの、日付は過ぎ、既に最終回まであと7日しか残されていない。

果たして無事にこの感想を完走することができるのか…。

とにかく全力全カーーーーイで行くしかないので、今回は一気に8カイ分の感想を。ステイシー登場にゾックス登場にと話題に事欠かない1クール目を一気に駆け抜けた。

 

 

・第5カイ!握り握られスシ大会!

ゼンカイジャーが5人揃ったところで突然放り込まれた寿司カイ。『仮面ライダーゼロワン』も第3話で寿司職人ヒューマギアをやっていたりと、令和のニチアサは何故か序盤に寿司を持ってくる傾向がある。

今回の敵はスシワルド。人や物を握ってくっつけ、身動きを取れなくしてしまうという能力を持った怪人。それにより、介人とジュランが背中合わせにくっついてしまい、他の3人はスシワルドをおびき寄せるため、とっておきの酢飯を作ることになる。

 

あらすじを紹介しているだけで頭が痛くなりそうなカイだが、全力でふざけつつも、中身はかなりシリアス目。5人の仲間が揃ったことで、再度ジュランと介人の関係性を見直そうという筋書きだ。

前回のラスト、ブルーンの言葉により、行方不明だった介人の両親が、トジテンドに誘拐されたかもしれないという疑惑が浮上した。長年求め続けた両親の行方に近づけるかもしれない、トジテンドから一刻も早く救い出さなければという焦りもあって、介人はうまく戦えなくなってしまう。

 

スシワルドに握られた後に我を忘れていた自分に気付き、人々のことまで考えきれなかったと呟く介人。そこでジュランが「そんなの当たり前だろ!俺たちもちゃんと巻き込めよ!」というのがもう最高で最高で。

周りに事情を話さず一人で抱えて一人で片付けることこそがヒーローの美学という側面もあるが、ゼンカイジャーは家族の物語なので、それを良しとしない。まして兄貴肌でもあるジュランは、頼られないことで周りが抱える寂しさを知っているのだ。せっかくの仲間なんだから、一緒に戦おうぜ、一緒にやろうぜ、ということを、重苦しい雰囲気にせず、さりげなく言葉に出来るジュランのキャラクターが光る第5カイ。

シンケンジャーが1年積み上げてきながら、影武者の登場でぶっ壊した展開を、既に第5カイでやってしまう辺りが、とってもゼンカイジャーらしい。

 

 

 

・第6カイ!不快不可解ゴミあつかい!

スシワルドの次はゴミワルド。街中をゴミだらけにし、発するゴミ電波によって人々を無気力にしてしまうという、これまた恐るべき怪人。私も部屋が適度に片付いていないと何事もやる気が起きない人間なので、気持ちはよく分かる。

 

このカイは、マジーヌとブルーンを軸に据えたカイ。前の記事で、「ゼンカイジャーは戦隊お馴染みの個人回がない」と言い切っちゃったのだが、さすがに序盤はちゃんとあったので反省。前回ガオーンに言われるがままに酢飯づくりに勤しんだ二人の性格のちぐはぐさが、しっかりと強調されるカイだった。

 

スーパー戦隊では凸凹コンビが互いを認め合う展開はお馴染み。『メガレンジャー』のレッドとブルーなんかが個人的には印象深い。今回は、部屋を片付けられない大雑把な性格のマジーヌと、お掃除大好きなブルーンの活躍が光る。ゴミワルドに対して、ひたすら片付けて道を切り開いたブルーンと、汚部屋で生活してきたからこそ危機を乗り越えられたマジーヌ。

 

どちらが正解と言うでもなく、互いを認め合う展開は王道だが、1年かけて「家族」の物語を提示するゼンカイジャーにおいては、結構重要なカイでもあると思う。おふざけ名乗りも段々と板についてきた。強調されるメンバーがいると、他のメンバーはひたすら賑やかしに徹するのも、この作品の良いところである。

 

本当に少しだけだが、ステイシーが初登場。ちょっと高いところにいるのは悪役の性だが、ポーズも意味不明で笑っちゃうんだよな…。

 

 

 

 

・第7カイ!魔界の王子は気がみじかい!

満を持して、ステイシーザーが登場!元々の想定にはなかったというのが嘘にしか聞こえないレベルで物語を牽引してくれたキャラクターの記念すべき初変身。ステイシーのいないゼンカイジャーなんて今だったら本当に考えられない…。

 

ゼンカイジャーもゾックスもワルドも好き勝手にふざけるせいで、番組のシリアス成分を一手に引き受けることになり、境遇の不幸さと不器用さも相俟ってついつい応援したくなる中二病キャラ。そんな彼のどこまでも中二病を極めたかのような暗黒チェンジ。初登場にしては戦隊をバンバン召喚し、ロボもバンバン登場させ、ゼンカイジャーをピンチに陥らせる。

 

ゼンカイジャーにおける過去戦隊要素は、ギア使用による技の再現くらいのものだったのに、まさかまさかのライバルキャラは仮面ライダーディエンドの如く次々とヒーローを召喚。更にロボまで召喚。しかもひたすら出す。ヒーローが利用される云々以前に、あまりの数の差に絶望感が凄まじいカイ。ロボを大量に出した後に次回に持ち越すの、本当にどうなることかと思った…。

 

ドラマパートでは、ステイシーザーの登場により、戦うことを躊躇した介人とガオーンの葛藤がメイン。ステイシーや過去ヒーローはトジテンドではなく人間なのではと考えてしまうと、ついつい手が出せなくなる2人。これを弱さとして描かず、2人の戦う決意を重苦しく描くでもなく、何なら「迷わずに戦えるジュラン達はすごいよ」と、残りのメンバーを立てることすら忘れない構成に脱帽。

 

もう少し前なら、というか平成ライダーなら「あいつらは人間かもしれないんだぞ!」とチーム内で意見が割れて険悪ムードになるパターンにまっしぐらに突入していく展開。しかし『ゼンカイジャー』はそんな古い価値観は既に捨てているし、強気に仲間を説得しようなんて考えのメンバーはいない。彼らは自分の意見を添えた上で、お互いに分かり合おうと、歩み寄ろうとする姿勢を忘れない。

 

困ったらフォローする、間違いそうだったら優しく伝える。これができる関係性って、本当に貴重だと思うし、ゼンカイジャーのそういうところには、他のヒーロー番組にはない優しさがあると思っている。

 

 

 

・第8カイ!ドアtoドアで別世界?!

ステイシーザーの猛攻は、ギアトジンガーの消耗という形であっけなく幕を下ろす。間一髪のところでピンチから抜け出したゼンカイジャーへのトジテンドからの次なる刺客は、ドアワルド。ドアを開ける度にどこかに飛ばされてしまうという展開も、戦隊で何度かあったもの。次々と海外へ飛ばされるゼンカイジャー。

 

何とかステイシーと再会した介人だったが、両親のことで嫌味をぶつけるステイシーに激昂。いやしかしこれはステイシーの煽りスキルが低すぎる。介人が単純な性格だったからこそ良かったものの、彼の出自を思うと全部空回って聞こえるし、ただ妬み嫉みを言い連ねているだけにしかなっていない。そこがまた哀愁を誘うステイシー。

 

バラシタラの息子であり、人間とキカイノイドのハーフ。父親であるバラシタラからは見放され、トジテンドでも不遇な扱いを受ける彼の闇が、存分に表現されていた第7カイと第8カイ…と思ったのも束の間、より強力な個性を持つ男・ゾックス・ゴールドツイカーことツーカイザーの登場により、事態は更なるカオスへと突入する。

 

ステイシーザーとの戦いに割り込んできた歌って踊る謎の男が突如ゴーカイジャー似の金色の戦士に変身し、先週登場したばかりのステイシーザーをボコボコにするシーンは、涙なしでは見られない。ゼンカイジャー全編を通して、私が最も衝撃を受けたのも、このカイである。

 

通常追加戦士の登場は20話前後。早くても1クール終わりくらいなのだが、第8話にしてツーカイザーは登場し、出来立てほやほやの新キャラに殴り掛かっていく。スーパー戦隊のお約束、そして様式美でもあった悪役ライバルと追加戦士。それらを例年より早い段階で畳みかけるように登場させ、しかも各キャラがギャグとシリアス、両極端に絶大なインパクトを誇るという、話題に事欠かないセンセーショナルな展開。

 

お約束をぶち破ってやろうという白倉Pの意気込みを感じられる第8カイは、ゾックスのダンスもあって、かなりお気に入りなカイでもある。

 

 

 

・第9カイ!世界海賊、愉快ツーカイ!

ステイシーザー登場、ツーカイザー登場。今回はツーカイザー含めたゴールドツイカー側のキャラ説明を丁寧にするのか…と予想した矢先で突然放たれたカシワモチワルド。ツーカイザーの歌って踊るインパクトも、ステイシーザーのあっけない幕引きも、初登場のフリント達も、全てこのカシワモチワルドが持って行ってしまう。

 

人々が柏餅への欲求を抑えられなくなり、柏餅を手に入れるためなら何でもするようになるという洗脳系の攻撃を放つカシワモチワルド。初登場のフリントですら、ずっと柏餅を食べ続けてしまう。桜餅と間違えたり、柏餅の転売など、細かい芸も挟みつつ、人々にひたすら追われるゼンカイジャーというなかなかにピンチなカイでもあった。

 

しかし当然おふざけ一辺倒ではなく、販促もストーリーもしっかり進めるのが『ゼンカイジャー』。ツーカイザーのシンケンフォームとオーレンフォーム、どちらも不思議な踊りとBGMが癖になる強キャラ。戦闘スタイルの違いをしっかりと打ち出しつつも、そもそも超力って何ぞや、とオーレンジャーアイデンティティを揺るがしているような気がしなくもない。

 

ストーリーとしては、ゼンカイザーとゾックスの一騎打ちが見どころ。勝負はカシワモチワルドの登場によって一旦保留となるものの、ゼンカイザーが偶然にもカシワモチワルドの能力を無効化していたことに気付いたゾックスは、勝負の負けを認める。これによりゴールドツイカー一家の海賊的振る舞いはなしに。それにより、ゾックスの借りはしっかりと返す、約束はきちんと果たすという律義な一面が明らかになる。どれだけふざけたカイだろうと、芯を一本通すことは忘れない姿勢。ゼンカイジャーのこういう、「しっかりふざけてしっかり落とす」取捨選択とコントラストが本当に堪らない。

 

 

 

 

・第10カイ!お昼も夜でもブルースカイ!

カシワモチに続くは、マヒルワルド。マヒルワルドの能力で、夜でも明るくなってしまう地球。天体にまで影響を及ぼすなかなかのスケール感。前回が柏餅だっただけに、一気にグレードアップである。

 

このカイでは、ゴールドツイカー一家の目的が明らかに。SDトピアでドジを踏み、SDの姿になってしまった双子の弟、カッタナーとリッキーを元の姿に戻すために、戦っていたのだ。SDトピアに戻るためには、SDトピアをトジルギアに封印してしまったトジテンドを倒すしかない。だからこそ、彼らはトジテンドと戦う決意を固めたのだった。

 

そのこともあってか、無茶苦茶な戦い方で人々への被害や周囲への迷惑を全く顧みないゾックスの姿勢に、介人は思い悩む。これに関しても強く説得するでなく、スシワルド戦の葛藤と合わせて、「家族のことになると前が見えなくなる時あるよな…」と相手に寄り添う姿勢が本当に素晴らしい。介人、若いのに人間が出来過ぎている。

 

その上で、ゾックスが好き勝手戦ったとしても、ゼンカイジャー5人がちゃんと人々を守るから安心してくれ!と言う答えを出すのが、いかにも介人らしいというか。この番組らしいというか。この天真爛漫さが、これからゾックスの心をも動かしていくことになるのを知っている身としては、なんとも楽しいカイだった。

 

演出的には、地下道で体育座りをしているマヒルワルドと、そこにいきなり歌って現れ踊って変身するゾックスが最高。

 

 

 

・第11カイ!渡る世間は鬼ゴッコかい?!

「鬼ゴッコかい?!」なんて言われても…となってしまうサブタイトル。オニゴッコワルドの能力により、タッチされた者は次々と鬼となり、仲間を増やしていくこれまたカオスなカイ。この第11カイと続く第12カイは、ゾックスの妹であるフリントに焦点が当てられている。自分をかばって鬼になった双子の弟に、SDになってしまった時の後悔を重ねるフリント。

 

フリントは結局最後まで追加戦士になることはなかったが、メインで唯一の女性素面キャラとして、作品の元気印として、ゴールドツイカー一家のメカニックとして、本当に良いキャラクターだったなと思う。変身ヒーロー以外にもスポットを当てていき、キャラクターを掘り下げるのは、ゼンカイジャーだからできることでもある。フリントを掘り下げることが、結果的にゾックスを掘り下げることにも繋がっていて、一家の絆が感じられる構成はさすが。

 

彼女の活躍によりツーカイザーもセンタイギアを使えるようになり、主に追加戦士の技などを発動できるように。初手がゲキチョッパーなのがなんかいい。

 

 

 

・第12カイ!ノロノロマイマイ、カタイ貝!

タツムリワルドにより、人々がノロノロになってしまい、ジュランとマジーヌ、そしてゾックスまでもが巻き込まれてしまう。ゾックスを快く思わないジュランとマジーヌだが、共にノロノロにされたことで接する機会ができるというのが、なんともゼンカイジャーらしい。

 

このノロノロの演出もすごくバカバカしくて大好き。同じロケーションでゆっくり動いて、後から声を入れればいいだけなので、コロナ対策としてもかなり良かったのではないだろうか。

 

そしてこのカイ、しばらく鳴りを潜めていたステイシーが再登場し、イジルデが開発した巨大ロボ・バトルシーザーロボがようやく登場するのに、やはり販促には勝つことができない。フリントが巨大空母をパワーアップさせ、ツーカイオーカッタナーが完成。ここまでツーカイザーに美味しいところを持っていかれると、既に可哀想なステイシーが本当に哀れに見えてしまう。「今日はここまでにしておいてやろう」というセリフも、もはやお似合いにすら聞こえてくる。

 

フリントの知的な一面が役立つカイでもあり、ゾックスとジュラン達の仲間への価値観が擦り合わされる重要なカイでもある。ゾックスにとっては妹と弟たちはあくまで守る対象。一家の長として、彼らに危険が及ばないように、最終的にケツ持ちは自分がやると、矜持を持っている。

 

大してジュラン達は、「それってフリント達は寂しいんじゃないの?」と問いを投げかける。5人で難局を乗り越えてきた、5人だからこそ乗り越えられたと強く信じる彼がそこに切り込むことも素晴らしいが、単発カイですぐに答えを提示しない辺りにもセンスを感じてしまう。このセリフは第5カイのスシワルド戦にも繋がっており、ジュランは隠しごとをされたり、1人で悩まれたりということが大嫌いなのだろう。家族なら、仲間なら、1人で背負い込まず相談するべきだと、そう考えているのだ。

 

だからこそのムードメーカーで、相手が話しやすいような雰囲気を作ることを心掛けているのかもしれない。そういうのって本当に大切だし、ジュランみたいな年長者の存在が、どれほどの若者を救うことに繋がるか…!そういう意味でジュランは本当に大好きなキャラクターである。

 

 

 

 

・最後に

前回の記事よりも中身が薄いものになってしまったかもしれないが、今回はゼンカイジャー全体の話というよりは、各話各話で感じたことをそのまま綴ることにした。第5カイから第12カイは本当に怒涛の展開で、ステイシーの悲哀が物語を引き立て、ツーカイザーの衝撃がその悲哀すらもぶち壊してしまうという、スクラップビルドな構成だった。しかし撒かれた種はまだ芽を出したばかり。これから40話近くかけて、キャラクターは徐々に成長していくのだ。何とか最終回までには一通りの感想を上げたいところ…。