スーパーヒーロータイム語り ギーツ第1話・ドンブラ ドン27話

一ヶ月近く更新をサボってしまったのだが、『仮面ライダーギーツ』が始まるこのタイミングこそ再開の時だと思い、SHTの感想記事をまたぼちぼちと書いていこうと思う。とか言いつつ、翌週分放送の数時間前に書き上げる形となってしまったが…。

ちなみに先週で終了した『仮面ライダーバイス』についての全体的な感想はこちらに。

 

curepretottoko.hatenablog.jp

 

仮面ライダーギーツ 変身ベルト DXデザイアドライバー(早期購入特典DXリバイスドライバーレイズバックルつき)

 

仮面ライダーギーツ第1話「黎明F:ライダーへの招待状」

もう率直に「おもしれえ!!!!」というのが感想。『ギーツ』第1話、とても面白かった。

これは持論なのだが、「連続ドラマの初回はほぼ確実に面白い」と思っていて。連載のマンガなんかもそう。

というのも、初回って何より作り手が気持ちを入れるものだし、何度もブラッシュアップするものだし、もっと言うとキャラクターの信念といくつかの独自性を提示して、ハッタリを利かせれば結構良いものができるのだろうな~と素人ながらに思っている。そういう意味で平成ライダーの第1話というのは、常に独創的なアイデアと主人公たちの見せ場にこだわっていて、どれもとても面白かった。特撮ヒーローの場合は、玩具などの情報が本放送前に出てしまうのだけれど、それを通り越して物語の旨味を出していて、毎年とても楽しみだった。

 

ただ、2年前の『仮面ライダーセイバー』で初めて違和感を覚える。これについては『セイバー』の脚本はコロナ禍の影響を受け何度も書き直したという話も聞いているのだが、1話の時はそんな事情は分からないので、ただ純粋に「大丈夫か…?」とだけ思ってしまった。飛羽真のステータスを「約束を大切にする男」に全振りしてしまったことで、信念のようなものが全く浮き彫りになってこず、突然現れた剣もひょいと抜いて、すぐに戦いに身を投じてしまう流れに、どうも違和感があった。ルナが消えた過去とのリンクも相俟って、余計にもやもやしたのを覚えている。

 

その次の『リバイス』も正直、個人的には面白みに欠けた第1話だった。事前情報から「こういうのをやるんだろうな」と思っていたものをそのままお出しされた感というか。もちろんそれが出来ていることはすごいことなのだが、ちょっと期待値を上げ過ぎてしまっていたかもしれない。『リバイス』に関しては事前に短編映画で雰囲気を分かっていたという点もある。

 

と、そういう意味で『ギーツ』の第1話には「頼むぞ…!」という切実な願いを込めて挑んだのだが、本当に良かった。視聴者の期待を裏切らず、予想を上回る作り。並行して放送されている『ドンブラザーズ』にも近い構造だった。

 

要するに、巻き込まれ型の第1話である。設定や世界観の説明は直接的に行うことをせず、あくまでセリフから推測できるレベルに留める。その上で、翻弄される面々と視聴者の視点をリンクさせ、そこに颯爽と事情を知るヒーローを登場させ、バトルへ。

半年前に「なぜがいっぱい」状態でいきなり変身させられた鬼頭はるかがネットで話題になったが、おそらくはその流れを汲むものなのではないだろうか。また、同じくライダーが競い合う『龍騎』や『鎧武』についても、実質何も知らない主人公が振り回されつつも戦いに身を投じていく第1話だったので、バトルロイヤルもののセオリーを踏襲した形とも言えるだろう。

 

高橋脚本はキャラクターの価値観の擦り合わせや衝突から生むドラマの熱量が非常に高く、特に序盤で次々とライダーを登場させながら、そのキャラクターの信念や個性を軸に、しっかりと1話毎組み立てられていた『エグゼイド』は見事だった。「人を救いたい」というオーソドックスな考えの永夢は濃いキャラ達の中で埋もれてしまいかねなかったが、他ライダーとのぶつかりによって、逆にそのキャラクター性が浮き彫りになっていく構成は、「面白い」よりも先に「見事」というため息が出てくるほど。

 

『ゼロワン』は正直ハマれなかった部分もあるのだが、第1話に関しては、「ヒューマギアは夢のマシン」という考えを持つ青年が突如社長に抜擢され、暴走するヒューマギアを止めようとする展開にグッときた。そこからバルカン、バルキリーを登場させ、ヒューマギアへの意識の違いを描いていく構成にも『エグゼイド』当時のものを感じて熱くなった。

 

そのため第1話に関しては申し分ないものが出るだろうな~個々人が(1話なら恵和かなと予想していた)デザイアグランプリに懸ける思い、所信表明みたいな回になるんだろうな~と予想していたが、それはあっさりと裏切られ、とにかくスピード感ある演出にこだわった形。

その上で今後視聴者と目線を合わせるであろう恵和の心情はしっかりと描かれていて、こちらも感情を乗せやすい作り。「なんだよこれ!」と戸惑う恵和にちゃんと寄り添いつつ圧倒的な活躍を見せるギーツの登場。非常にヒーロー感があるというか、嫌味ったらしくない絶妙な塩梅の主人公なのもよかった。

 

ふと思い出したのは『ビルド』の桐生戦兎。恵和は万丈とはまるで違うタイプだが、英寿のあの孤高かつちょっと近寄りがたいけど頼りになる感じは、桐生戦兎を想起させる。おそらくバディものにはならないと思うが、英寿と恵和の関係性は今後変化したりしていく気がするので注目したい。

それにしても、恵和のキャラクター造形はもっと主人公に寄せると思っていた。「世界平和」を訴える、理想的なヒーローポジションを敢えて2号に配置して、1号のベテラン度を強調する構造だと予想していたのだが、恵和の思想は「何となく」が基盤で、結構スカスカなのは予想外。これは恵和が戦いの中で「理想の世界」を見つけ、そのために奔走する物語なのかもしれない。でも、この言葉のスカスカ具合は闇堕ちもできそうなポテンシャルを秘めていて、どっちにしても面白そう~~~~という期待感を煽らせてくれる。

 

高橋脚本では主人公の考え方が一貫している傾向があるのだが、今回はオーソドックスな主人公を恵和が担っていることで、どうなるか読めないところも面白い。

そして何より驚いたのが、第1話でいきなりデザイアグランプリの最終戦を行ったこと。英寿は半年間ずっと戦い続けていて、理想の世界を創るために頑張ってきた。そして今回、見事大会に優勝し、理想の世界を生み出す。英寿の理想とする世界はどんなものだったのか、デザイアグランプリとは何だったのか。今後の引きもしっかりと用意されているし、その答えもちゃんと提示してくれそうなのが好印象。『ドンブラザーズ』はキャラの面白さで爆発的な推進力を出してはくれるが、設定をどこまで説明してくれるかは、ちょっとまだ分かっていないところがあるので…。

 

このデザイアグランプリが半年という期間で終わってしまったことを考えると、第2話から開催されるもので1年奮闘するとも限らない。1クールで終わったり、何なら一ヶ月で終わったりと、無限に可能性の広がる設定だ。目標とする世界のために一人が何度もデザイアグランプリに挑むループ回なんてのがあったら面白そうである。後は、「こいつ絶対ライダーにしたらヤバい世界作りそう…」ってキャラを出しといて、次回のデザイアグランプリで参加者になっている、とか。

 

細かい設定はまだ分からないものの、とにかくいろいろな可能性を見せてくれたし、仕掛けもまだまだ多そうで、とても期待できる第1話だった。シローをあっさりと脱落させたのもすごい。大勢のライダーが発表された時に脱落要因だと気づいてはいたけど、あまりに早すぎる…。しかしこの設定だと再びシローを登場させることもできそうなので、そこにも期待したい。

各々の目的がうまく絡んで良い群像劇になればいいなと思う。

 

あと、城が普通に城だったの、なんなんですかね…。面白いけど、あまりに「城」すぎて笑ってしまった…。

 

 

 

 

 

暴太郎戦隊ドンブラザーズ ドン27話

 

1週前はリバイス最終回に大乗っかりしていたのに、今回は新番組『ギーツ』に負けじと、タロウVSソノイという作品の核を進めるマジっぷり。こういう縦軸の話は、白倉・井上コンビだとどうしても後に回される印象だが、『ドンブラザーズ』は視聴者に飽きが来ないよう、意図的に物語をぐんぐん進める時がある。それを『ギーツ』初回放送にぶつけてくる辺りが、対抗意識バリバリで笑ってしまう。もちろん、『ギーツ』はその程度で埋もれるようなものじゃないだろ?という信頼もあるのだろうけど。

 

タロウとソノイの対決。過去には嘘がつけないというタロウの弱点を利用し、ソノイが卑怯な形で勝利を収めた。ソノイ自身がそこに引け目を感じていることで人間味が加わり、タロウ復活が彼にとって喜ばしいことであった事実は、視聴者をも大きく湧かせた。しかし、ドン家の末裔と脳人である彼らは、戦う宿命にある。ソノイがどんどんネタキャラ化してきたことで、何とかこの戦いを先延ばしにすることに成功していたが、遂に決着の時が訪れてしまった。

 

シロクマ宅配便で欠員が出て、戦いよりもバイトを優先するタロウ。戦うためにタロウのバイトを手伝うソノイ。再登場の図々しいおばちゃんも、更にユニークになっていた。いざ勝負と思われたその時、ジロウ、ムラサメ、ヒトツ鬼、獣人、ドンブラザーズ、ソノニとソノザが現れ、事態はカオスに。獣人の正体はドン家が人間の欲望の供給を制御しようとしたもののなれの果てであることも明らかに。カオスをやりながら急に重要な謎を明らかにする辺りが、いかにもドンブラらしい。

 

最終的な決着は、タロウの勝利。相打ち覚悟で猛特訓を重ねたソノイですら、タロウには勝つことができなかった。「俺の強さは、悲しい強さだ」というセリフに込められた意味は、今の時点では解釈の幅が広すぎる。脳人でなければ初めての友だちになれていたかもしれない存在を、自らの手で切らなければならない悲しさ。その戦いこそを、ソノイ自身が何よりも望んでいるという悲しさ。

 

ムラサメに拾われていたので、ソノイはまたどこかで再登場するのだろう。願わくばタロウが暴走したり、孤独な戦いを強いられた時に「友人」として現れてほしい。ムラサメのアバターとなる説も流れているが、それはあまりに悲しすぎる…。

今回は言葉で説明するのが非常に難しい回だった。理屈ではなく、感情を揺さぶられるような。井上脚本の旨味がどこまでも詰め込まれていて、もはやこれを言葉で解体することは野暮だとすら感じてしまう。本来なら情を交わすはずのなかった2人が、出自という理由だけで戦わなくてはならない悲劇。『ダイレンジャー』の亮と魔拳士ジンの関係性を思い出す。その他にも、人によって井上脚本の様々なパターンを想起するのではないだろうか。

 

次回は再び犬塚イジり。シリアスな回の後にはいつも彼が丸々1話かけて尻拭いをしなければならない展開が続いている。だが、犬塚の背負った運命もかなり悲劇的な予感しかしないので、この楽しさがいつまで続くのか…という恐怖もある。『ドンブラザーズ』のことだから暗すぎることはないのだろうが、それでも白倉・井上コンビを舐めてはならないのだ。

 

ソノイが倒されたことにより、ソノニ・ソノザも各々動き出す可能性が。逆に動き出さない可能性も。また、獣人は不死身という設定のようだが、これはパワーアップなどによって倒せるようになるのだろうか。『ドンブラザーズ』は毎週こちらのツボを押さえつつ、それでいて期待を上回る爆発力を備えているので、全く目が離せない。

もし『仮面ライダーギーツ』まで面白くなってしまったら、SHTが大変なことになる…。ひとまずは次回に期待したいところ。