映画『映画刀剣乱舞-黎明-』評価・ネタバレ感想! とにかく言及するところが多すぎて散漫なのが本当にもったいない…

刀剣乱舞』という作品は名前しか知らず、以前の実写映画さえスルーしてしまった人間である。しかし公開後に特撮ヒーロー好きの間で「これもうニチアサだろ!」と話題になっており、ちょうど映画新作の公開のタイミングということもあり、ひとまず1作目を鑑賞した。こういう時って大体どこかの配信サービスに過去作があるものだけれど、なかったのでAmazonでレンタル。

そもそも小林靖子脚本で時代劇で特撮映画だなんて、もうあまりに特撮オタクを釣ろうとしてるのが見え見えだし、演者さんも(舞台に詳しくないので2.5次元と同じ人なのかどうかちゃんと理解していないのだけれど)ライダーや戦隊に出演していた方がいたりと、そもそも会社が違うのにそれだけでもう楽しめる作品だった。

それでいて時代劇大好きな小林さんがきっとワクワクしながら書いたんだろうな~と想像できるセリフ回しとキャラクター達。信長の時代を舞台に、ミステリー要素を含みつつ、各キャラクターの個性を活かして物語に組み込む手腕は、『刀剣乱舞』を一切知らない私でも本当に面白いと思わせてくれた。

そのため速攻で本日公開の2作目『映画刀剣乱舞-黎明-』もチケットを予約し、女性客が圧倒的多数な中、ど真ん中で男性一人で鑑賞してきた。かなりのアウェイ、決して何かあったわけではないのだけれど、どこか居心地の悪さがあった。

 

 

 

 

そしてその感想なのだけれど…正直言えば前作の方が面白かった。

そもそも『刀剣乱舞』をほとんど知らず「さにわ」なんて言葉も聞き馴染みのないような人間の感想なので、詳しい人には様々な楽しみ方があるのかもしれない。ただ、現時点で言うのであれば、やや微妙。

前作の鑑賞で上がったハードルを越えられていないように感じてしまった。前とは趣を変えて「刀剣男士たちが現代に!」というストーリーなのだが、ここに期待していたものもどこか消化不良な印象。ただ、決して作品自体が嫌いなわけではなくて、これは単にこちらの知識不足な部分も多いのだろうなあと思った。ガッツリネタバレだが、ラストの怒涛のアクションでわらわらと出てくるキャラクター達も、ほとんど知らないのであまり興奮できず。私は仮面ライダーシリーズが好きなのだけれど、映画とかで最後に過去の仮面ライダーが一気に出てくるやつを初見さんが観た場合こんな気持ちなんだろうなあと、勝手に想像していた。

 

 

では改めて、なぜ私はこの映画を楽しめなかったのか。

その理由は単純に、「散漫」な印象を受けてしまったためである。

多くを盛り込みすぎてしまったがために、どうにも取っ散らかってしまっているのだ。

やっぱりこの映画のキモというのは「刀剣男士達が現代に来る!」というところ。前作は織田信長の時代を舞台に繰り広げられた時代劇風のファンタジー織田信長平成ライダーが何度も擦った偉人なので、そこも個人的にはめちゃくちゃ面白かった)。対して今作は、現代ファンタジーとなっており、余計にニチアサ感が強い。また前作に対する強みとして、時代を現代にしたことにより、観客が世界観に容易に入っていくことが挙げられる。

そして何より、「仮の主」という設定。前作の「審神者堀内正美を配置する」という手腕にも唸らされたが、仮の主という設定により審神者が多数登場。刀剣男士達が戦うのを見守る姿は、どこかデジモンシリーズの選ばれし子どもたち感があった。刀剣男士達にかっこいい~~~~とテンションをぶち上げあられ、ドラマ面やストーリーの動きを審神者達が担う…。そんなストーリー展開があったらよかったのだが、実際には審神者達はほとんど出オチでしかなく、この設定がうまく活きなかったのが本当に勿体ない。

 

 

特にギャルの実弦と長谷部の関係は予告の時点でかなりウケていたし、実際観ても最高だった。鑑賞した方は分かるが、実弦は本当にただの優しいギャル。オタクにも優しいギャルで、誰にでも屈託なく話しかけられる強者。むしろこいつが主人公でいいだろと思えるレベルで琴音よりも存在感がある。

しかも実弦、片手を空けたいのか弁当は長谷部に持たせるけど、一番重いはずのキャリーバッグはちゃんと自分で持ち運ぶんですよ…!そんな実弦に振り回される長谷部も本当に最高だし、実弦との別れのシーンはさすがに良すぎる。

 

 

そんな風に、今回はとにかく要素が多い映画になっていて、その一つ一つが散漫になってしまっている印象を受けてしまった。

仮の主と刀剣男士の関係、歴史に呑まれた酒呑童子、琴音のキャラクターやストーリー。その他にも、そこまでやらなくてよくない!?みたいな鬱展開が途中で挿入され、ちょっとしたホラー演出もある。私はホラー映画も好きなので決して悪くはないのだけれど、この映画のコンセプト的にそういう現代ホラーやる必要あるかなあ…みたいな。

 

 

普段ならあまり気にならないし、何よりアクションシーンがとても良かったのでそれでチャラになるレベルなのだが、やはりストーリーは1作目の芯の通り方が素晴らしかっただけに、どうしても比べてしまう。

「なぜ三日月が討つべき織田信長に味方するのか?」という謎を他のキャラと視聴者が同時に追いかけていくミステリー要素と、そこに隠された三日月の真の想いの素晴らしさ。それは現代ドラマでは観られないような、時代劇的な趣のある持ち主と物の関係性に終着し、もはや純文学の様相。

 

そういう意味で今回はとても現代的で、ふと手に取ったファンタジーもしくはホラー小説にありそうな話運び。その差別化自体は悪くないし、そもそも直接的な続編というわけでもないようなので(三日月と長谷部の本丸が違うの混乱しました)、舵の切り方としては良かったと思う。

ただ、一本芯の通った1作目に比べると、どうしてもごちゃごちゃしている。人の思いを奪って歴史を作らせないようにする~という敵の目的も、琴音がさらっと気付いて終わりだったりと、この映画がどこに重きを置いているのかがあまり見えてこなかった。具体的に「ここが悪い!」と挙げるタイプの映画ではないのだけれど、じゃあどこが良かったかと聞かれた時に、どれも消化不良に思えてしまうのだ。

山姥切国広との対立や、膝丸・髭切兄弟のキャラクターなど、どこか『刀剣乱舞』を知っている人向けの作りにもなっていたように感じた。初見は置いてけぼりというほどではないけれど、どうしてもついていくのに時間がかかってしまう。まあ知識が浅い私が悪いし、これから知識をつけていけばいいのだが。

 

 

とはいえ観た後にTwitter等で感想を漁ると結構大絶賛だった。やはりこれは…というか当然なのだが、『刀剣乱舞』を知っている方が楽しめるタイプの映画なのだろう。消化不良ということは逆に言えばもっと観たいということでもある。そういう意味では本当に「勿体ない」なあと思ってしまった。これだけ色々なネタを仕込んでいて、たくさん話題にできる部分があるのに、どうにもそれがまとまっていない。

というわけで実写刀剣乱舞、本当に30分1クールのドラマとかでいろいろとやってほしい。絶対に需要があると思うのだけれど…。