機界戦隊ゼンカイジャー感想④ 第19カイ~第24カイ

スーパー戦隊シリーズ 機界戦隊ゼンカイジャー Blu-ray COLLECTION 2

ゼンカイジャーにもついにパワーアップが。映画の宣伝も兼ねた『仮面ライダーセイバー』とのコラボカイ、ステイシーとの決戦、バカンスなどなど。とにかく話題に事欠かないゼンカイジャーの第19カイから第24カイまでの感想をざっくりと。

 

 

 

・第19カイ!ゼンカイ改め超ゼンカイ!

ゼンカイザーがゼンカイジュウギアを用いて秘密のパワーアップ! いよいよ登場したスーパーゼンカイザー。1人+4体のロボみたいな構成のゼンカイジャーが、最後の砦ゼンカイザーまでロボっぽくしてしまう。『恐竜戦隊ジュウレンジャー』好きには堪らないフォルム。ここまでジュウレンジャーを猛プッシュしてくるとは…。武器のゼンカイテンランスっていう名前も最高だし、先にワイヤーが付いてて多彩な攻撃方法に繋がってるのもカッコイイ。

 

話としては、私が大好きな第15カイのアンサーにもなっていて。カブトムシワルドに幻覚を見せられ、永遠にカブトムシ捕りをさせられる5人。いきなりタンクトップにされ虫取り少年の恰好をさせられるのは滑稽なのだが、その最中、介人のみが家族との大切な記憶を思い出し、我に返る。15カイのレトロワルド戦ではキカイノイドの4人に戻りたい過去がなかったからこそ勝利することができたが、今回は介人に両親とのカブトムシの思い出があったからこそ活路を見出すことができたという綺麗な対比。

 

ステイシーの全力名乗りによって状態に変化が起きた介人の両親。その覚醒により生まれたゼンカイジュウギアでパワーアップと、これから始まる両親奪還を示唆する内容でもあった。それにしてもステイシー、マジで最高だな…。

 

 

 

仮面ライダーセイバー特別章 界賊来りて、交わる世界。

映画『スーパーヒーロー戦記』公開の宣伝も兼ねたコラボ回のセイバー編。オリヒメワルドを追ってセイバーの世界にゾックス達がやってくるという物語。一応紹介はするものの、セイバー成分がとても強い回。というか、縦軸の物語をぐんぐん進めていたセイバーの箸休め回でもあり、オリヒメワルドの能力をしっかり解析して立ち向かったり、小ネタが効いていたりと、何ならいつものセイバーより格段に頭に入りやすい構成になっている。比較的まとも(であるが故に考えすぎて対立することもある)なセイバーの面々をおちょくるかのように強大なインパクトを残すゾックス。

 

ここでも『ゼンカイジャー』が積み上げてきたキャラクターの魅力が爆発していて。ゾックスは「世界海賊」という肩書きと、「変身ダンス」だけで世界をかき乱すことができる。織姫と彦星の伝説を飛羽真から訊いて「呪いみたいなもんか…」と、自身の弟たちの境遇に繋げるゾックス。それはさすがに無理があるのでは…と笑ってしまう。

 

 

・第20カイ!剣士と界賊、兄の誓い。

コラボカイ後編。コラボにちなんだ仮面ライダーギアの使用だけでなく、スーパーツーカイザーの初登場まで盛り込んだ豪華絢爛なカイ。特筆すべきはコラボということもあってか、遂に香村脚本以外のゼンカイジャー本編ということ。映画も担当した毛利さんの脚本により、セイバーとゼンカイジャーの共通点があぶり出されていく。

 

ゼンカイジャーではあるものの、今回のMVPは完全に仮面ライダーデュランダルこと、神代凌牙で間違いないだろう。マスターロゴスを守護する強敵として現れた神代兄妹だったが、キャラクターの掘り下げがイマイチなされないまま飛羽真達と合流。玩具すらもプレバン限定になってしまった不遇な2人のライダー。

代々マスターロゴスの側近として戦ってきた神代家の末裔ながら、マスターの行動に違和感を持ち始めるという役どころは非常に魅力的なはず。それを活かしきれずシスコン&ブラコンという記号的なキャラクターを当てはめられつつあった2人だが、このコラボで彼らのファンになったという方は結構多いはずだ。

 

やはり、女装は強い。クールなキャラクターが女装をするだけで面白くなるということを、ニチアサは、ゼンカイジャーはよく分かっている。彼が桃色のチャイナドレスを着て女性を次々に攫うヒコボシワルドをおびき出そうとしているというだけで、もう好きになってしまうから凄い。出し惜しみなどせず、セイバーの面々を1人ずつゼンカイジャーに引き込めばセイバーは間違いなくもっと面白くなっただろう。キャラクターを大切にする作品だからこそ、凌牙からここまでのポテンシャルを引き出すことができたのだ。

 

攫われた妹を絶対に取り返そうと意気込む凌牙に対し、自身も妹を含む家族を大切にしているゾックスが寄り添う。むしろセイバーから兄妹要素を持ってくるという立案が素晴らしいし、この辺りのテーマを丁寧に汲み取る手法は、さすが毛利脚本。『仮面ライダー4号』などもそうだが、数々の作品のキャラクターが混ざる特別編において、毛利さんほど素晴らしいものを仕上げる人はそういない。思えば『仮面ライダージオウ』でもかなり丁寧に過去作を拾っていた。香村さんの監修もあり、ゼンカイジャー側に違和感もなく楽しく観られたカイ。

 

 

・第21カイ!大カイジュウの大破壊!

コピーワルドによって介人とゾックスの偽物が生み出され、各地で悪さを続ける…というカイ。「俺の姿で好き勝手されるのは許せねえ」と怒りを露わにするゾックスがいい。介人とゾックスが合体するゼンカイジュウオーも初登場。ただ、ギャグ成分が控えめで(とはいえ偽介人と偽ゾックスのレオタード姿はあるけど)、個人的にはあまり心が動かされなったカイでもある。

 

本来ニチアサに必要なギャグ成分は充分に入っているはずなのに、もうこの程度では満足できなくなってしまっている辺り、これまでの20カイで私の脳は順調に支配されているということだろう。

 

ゼンカイジュウオー初登場は、サブタイトルにもあるように気合の入った「大破壊」。大怪獣のように街を壊したいけど、ヒーローが街を壊すのは…という点から生まれた、街の偽物を作る怪人コピーワルド。偽物回はスーパー戦隊のお約束でもあるが、きちんとヒーロー側の名乗りの妨害までして自己をアピールする辺りはさすがゼンカイザーとツーカイザーの偽物。主張が強い。

 

巨大戦はさすがの迫力。ゾックスと介人が合体するというのも観ていて楽しいし、人間だった二人が怪獣じみてしまうという逆のアプローチも面白い。私は小さい頃ブイレックスの玩具で遊んでいた子どもだったので、あのフォルムには思い入れも強い。それにしてもゾックスを一旦SD状態にするの、呪いすらも戦いに取り入れてしまうフリントの器のデカさに泣いちゃうな…。リッキーとカッタナー達への配慮もあるのかもしれない。

 

 

 

・第22カイ!ウシシなモ~れつ闘牛会!

なんか、普通に泣いてしまった…。2クール目終了を前にして、ここまでなあなあにしてきたガオーンのキカイノイド嫌いにしっかりと切り込む姿勢とそのクオリティに。ご飯をつまみ食いしようとしたゼンカイジュウギアを諫めたガオーン。しかしゼンカイジュウギアはそれを気にしてか家出してしまう。そのせいか、戦いにも現れずトウギュウワルドを逃がす羽目に。事情を説明したガオーンに「人間でもそうしたか?機械だからじゃねえのか!」と詰め寄るジュランの気迫が辛い。

 

結果的にゼンカイジュウギアはただゴミネットに引っかかっていただけなのだけど、ガオーンは自身の行いを見つめなおすことに。ジュランの言葉で自分の中に未だに残る差別意識に改めて気づかされ、そんな自分にさえも気さくに接してくれる4人の優しさに、ガオーンは心打たれる。そして再び戦いに赴き、トウギュウワルドによってトウギュウのようにされてしまった彼らの攻撃を、自らを犠牲にして一身に受け続ける…。

 

ミスをしたメンバーが自己犠牲で挽回しようとする展開は王道。そこにガオーンの強い後悔やジュランの反省も相俟って、本当に素晴らしいカイになっている。基本的にリテラシーの高いゼンカイジャーのメンバー(ただしバカ)だが、ガオーンの差別意識については、やはり作中でしっかり取り上げられていなかった。ステイシーザー登場の際に戦えなくなったという描写はあっても、それがピーク。以降彼の危ない性癖は、キャラクターの個性として受け取られ、流されてしまっていたのである。

 

放送当時、ガオーンを好きになれなかった理由が正にこれで。キカイノイド嫌いという点がギャグっぽく流されていくだけのストーリーに、どうしても違和感が拭えなかった。彼がジュラン達のこともちゃんと認めているようなことは伝わってくるものの、やはり重要なエピソードが欲しいと思ったタイミングでのこの第22カイ。本当に素晴らしかったと思う。ジュランがきちんと反省するのも最高。

 

ゼンカイジャー5人が再び団結したところで、久々にステイシーザーも登場。カラフルに赴き、やっちゃんに「今日が最後かもしれません」と告げるステイシーの悲哀が辛い…。自分の中に芽生えた感情に必死に蓋をして、介人を倒そうとする彼の心境は第23カイへと続いていく。

 

 

・第23カイ!三大合体 地球最大の戦い!

ゴジラ映画オマージュのサブタイトル。介人とステイシーの一騎打ち。カラフルでのやっちゃんとのやり取りをこっそり聞いており、ステイシーの思いを汲み取った上で戦いに臨む介人。そして、引くに引けなくなったステイシー。優しさや熱さで人を惹きつけるタイプの戦隊リーダーは数多くいたが、介人はそれだけでなくしっかりと相手の立場に寄り添えるところが素晴らしい。

 

自身を倒すということが、大切なやっちゃんを悲しませること、つまりはステイシー自身と同じ境遇に立たせることだと介人は分かっている。それでも、「それはステイシー自身が一番分かっているだろうし、覚悟を決めてきてるはず」だと、どこまでも優しさを見せつける介人。それによりステイシーの哀れさが強調されかねないバランスだが、彼の孤独っぷりを知っているこちらは、介人の思いやりも含めて、ますますステイシーを好きになってしまうのだ。

 

ゾックスも感じていた介人の迷い。そんな彼を支えるのは、年長者のジュラン。ラーメンのシーン、本当に感慨深いものがあるというか。悩んでいる人をあんな風に支えられる大人に憧れる。ステイシーはダークセンタイギアで偽物のスーパー戦隊を使うことすら正当化してまで、介人を倒そうとする。そうすることで自身のアイデンティティが確立すると、半ば疑いながらもそれしかないという彼の選択に、自然と涙してしまう。そしてそんなステイシーに対し、「なら俺たちも介人の武器だ!」と参戦するジュラン達。孤独を強いられ、偽物を召喚することしかできないステイシーと、仲間たちにフォローされる介人の対比でステイシーを甚振る。

 

結果的に新合体もあり、バトルシーザーロボ2世が敗退。川辺に倒れるステイシーをトジテンドまで運んでくるゲゲ。「もう用済み」というイジルデの言葉が辛い。ステイシーは「捨て石」でもあるかもと俳優さんが言っていたが、それを直接的に言葉にされると、さすがに込み上げるものがある。今思うと、ゲゲの暗躍はちゃんと描写されていたのだなあと。

 

・第24カイ!侵略完了!できるか奪回?!

第22カイ、第23カイとしっかりシリアスをやってしまってすみませんでしたと言わんばかりのガッツリギャグカイ。開始数分でバカンスワルドにより世界の侵略が完了。人々はバカンス状態へと突入し、ただひたすらに楽しい生活を送ってしまう。介人達も例外ではなく、ビーチバレーにスイカ割りと、バカンスを満喫。しかしそれはバカンスワルドやゴールドツイカー一家も同様で、三つ巴のスイカ割り対決がスタートする。

 

いつもなら「一見無害そうに思えた敵の洗脳が、実は大変なことに…」というパターン。レトロワルドのカイなんかが正にそうで、レトロで過去を懐かしんでいたら、追憶のあまり無気力にさせられてしまった。しかしこのバカンスワルド、本当にバカンスをさせるだけという何とも言えないキャラクター。悪さを一切していないので憎めないワルドでもある。色々と検索をかけていると、バカンスワルドのあまりの善性にかなり人気も高いようだ。

 

しかしあまりの呑気さと、人々がバカンスを楽しんでしまっている事実にバラシタラが激怒。なんとバラシタラ自らバカンスワルドを撃破してしまう。東映公式でも言われていたが、これはバラシタラ史上最大のミスでは…。ゼンカイジャー達もバカンスワルドの死を悼むのが、何とも言えない。

 

それでいて介人の中にはバカンスワルドと楽しんだ記憶がしっかりと根付き、これが「ステイシーとも仲間になれる」という意識へとつながっていくのだから、ゼンカイジャーは侮れない。ただのギャグカイにもちゃんと意味を持たせるのがこの作品なのだ。

 

 

・最後に

第22カイが個人的には印象深かったが、ゼンカイジュウギアの登場によって更にパワーアップした彼らの活躍が眩しい。ステイシーの存在感にやや押され気味なツーカイザーも心情描写でしっかりと存在感をアピール。ここからは介人の両親に更に迫っていき、縦軸の要素がぐんぐん強くなっていく。テニスカイの足音が近づいてくる…。