スーパーヒーロータイム語り ギーツ第3話・ドンブラ ドン29話

今週はギーツ・ドンブラ両方ともすさまじく面白かった。比較的スローペースだったドンブラも、ギーツが始まったことで置いていかれないように&食い合わないように、怒涛の推進力を発揮している感がある。

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仮面ライダーギーツ第3話「邂逅Ⅱ:ゾンビ狩り」

先週の時点で何となく気づいてはいたが、サブタイトルは各世界における何話目かを記録していく形なのだろうか。英寿がスターになった世界の2話目、基本設定は既に説明され、よりゲーム性とキャラクターのエピソードが補強される形に。2話までは視聴者と同じ目線の景和を軸に据え、英寿のミステリアスさとヒーロー性が強調されていたが、今週はまた一味違った塩梅に。いや、とにかく、面白い、面白すぎる。

 

現状の生き残りの中で唯一の女性ライダー、ナーゴ。お嬢様育ちでありながら、厳格な母親に全てを管理される生活に嫌気が差し、家出配信者を50回行う猛者。デザイアグランプリで叶えたい世界は、運命の人に出会える世界。

『ギーツ』はゲストキャラを配置せず、生き残りゲームをとにかく進めていくつもりのようだが、実際には各ライダー達の掘り下げを次々に行っていくのだろう。手触りとしては、各メンバーがメインの回を順番に進める、スーパー戦隊的のフォーマットに近い。とすると第5話はいよいよバッファだろうか。

 

前作はひたすらに景和の凡人っぷり(かつ、空虚な世界平和を謳うことの危うさ)が描かれ、それに反比例する形で、英寿のヒーロー性が強まっていった。巻き込まれた一般人という視聴者に近い属性を持つ景和の目線で物語をスタートさせることで、分かりやすく設定を伝えようという意図があったのだろう。それを終えた第3話はとにかくガンガンいこうぜ、という内容。生き残りゲーム系の話をよく知る人なら「お馴染みのやつだ!」と嬉しくなるし、全く知らない層には、生き残り系王道の面白さを提供する。このハズさない感じに、第3話にして『ギーツ』という作品への信頼がどんどん上昇していく。

 

英寿目線で言うと、前回と同様、ハズレアイテムでもきっちり攻略してくる強キャラ感がとても良かった。その上で「持ち駒で何とかする」ではなく、「強いアイテム持った方が絶対強い」と考えていることも、バッファとの交渉でよく分かる。また、ナーゴやダパーンの願いに対して一切干渉せず、勝つことのみを訴えるストイックな姿勢にもしびれた。こいつ、デザイアグランプリに他の参加者を蹴落とすことでポイントをもらえるシステムがあったら、殺しはしないまでも積極的に倒しにくるんだろうなあというヤバさがうかがえる。

 

ゾンビは頭を狙う、ウォーターで密室に水を溜めてそれを解放し敵を一層、リボルブチェンジの横移動で攻撃を回避。などなど、演出面でも「歴戦の猛者」感が嫌と言う程強調され、膝をつくような場面が全く想像できない最強キャラと化していく英寿。それでいて前回の子どもを救うような場面だったり、ダパーンからナーゴを助ける場面だったりと、何かしらの信念に則っていることを感じさせてくれるのが嬉しい。個人的には天道総司並みの無敵っぷりを誇ってほしいが、彼はあまりに浮世すぎたので、英寿には地に足をつけたキャラクターでいてほしいという思いがある。少なくとも過去に何かしらを抱えていて、目的も明確にありそうなので、そこは期待したい。高橋脚本なら情報の出し方も何かしら工夫があるはず。

 

逆にどんどん株を下げていったのがダパーン。斜に構えた高校生というだけでもう本当にみっともないキャラクターなのだけど、でっかいパンダ頭で何とかキュートさをカバーしようとしている辺りが憎めない。しかし今回悪行三昧の上にあまりに幼稚な願いが明かされ、私の中での高感度は地に堕ちた。

そもそも開幕即ゾンビに噛まれるくらい油断してたという実力のなさ。車に轢かれた時もイヤホンとかしてるように見えたしバスケットボールついてたし、こいつただの不注意野郎なのでは…。その怪我が原因でバスケが出来なくなり、友だちもおらず、世界をぶっ壊したいと願ってしまう、思春期特有の短絡さ。「なら好きなバスケができる世界を願えばいいじゃん!」というベストアンサーが即出せるナーゴ、本当に良かった。個人的には来週で脱落してほしい…過去も出し切ったしもう物語的にあんまり居る価値もなさそう…。

 

ただゾンビがわらわら出てくる回かつゾンビバックルの活躍回で、ゾンビものあるあるな共闘のフリをして裏切るというパターンを披露してくれたのはよかった。でも、そういうことするやつはあんまり長生きできないんだよダパーン君…。

それと、「ライダーバトルはしない」発言をしていたのに、第3話にしていきなりギーツがダパーンをボコボコにしてたのでつい笑ってしまう。もちろんゾンビに噛まれていたからゲーム的にアリだし、ナーゴを救うためというのも分かるのだけれど。卑怯な策で人を陥れようとした愚か者がボコボコにされる流れはとてもスカッとした。ナーゴが退場はちょっと考えにくい気もするので、来週はやはりダパーンだろうか。

 

ブーストを手に入れた景和くん。しかし、来週はナーゴが装着するらしい。メリーももう少し活躍してほしいというか、あのお調子者感はいい奴になっても悪い奴になっても面白いので、退場はもう少し先だと嬉しいところ。バッファはハズレアイテムでも腰巻だけは標準装備なので、ちょっと見た目が面白い。引き続き良いアイテムを全然ゲットできずハズレで頑張るバッファ君は応援したくなるかもしれない。態度がデカいキャラクターが頑張ってる姿が大好きなので…。

 

ただ個人的には換装や装備の入れ替わりに関してちょっと地味に感じてしまっているというのもあり…。やっぱり物凄いペースで新フォームが登場していた近年の作品に慣れてしまい、「早く次のフォームを!」という気持ちになっている。タイクーンやナーゴにも、それぞれ固有とはいかないまでも、個人の性格やスタイルにマッチしたフォームを与えてあげてほしいところ。ずっとエントリーフォームやマグナムの使い回しというのも見ていてキツイので…。

 

いやしかし高橋脚本、一つの場面での展開作りと情報の濃さがめちゃくちゃで感動してしまう。今週で言うと、第1ウェーブで最下位だったナーゴが「お金でアイテム買えないの~?」と泣きつく場面。ここから説明が入り、コスチュームこそ変えられるが、バックルを購入することはできないと判明。つまりリアルでどんな生活をしていようと、デザイアグランプリの成績とアイテムの引きが勝負だと分かる。そこからダパーンが嫉妬し、何でも持っているナーゴを憎むようになるという因縁の作り方。さらに英寿が願いを尊重するセリフを入れ、主人公性を強調。つ、つ、強い~~~~~~~!

 

『セイバー』や『リバイス』ではこれほどスムーズな流れで各キャラの個性を出しつつその後の展開に活かす、みたいなのが観られなかったので、本当にビビる。間違ったことを言うキャラクターがいて、それをヒーローが諭すというだけのやり取りが2年間続いた(それも決して悪いことばかりではないけど)シリーズで、ここまでキャラクターの深味を醸し出せるやり取りが拝めるとは…とちょっと感動してしまった。

キャラクターがたくさんいることに、しっかり意味が乗っかっている、というか。『エグゼイド』でその実力は分かりきっていたけども、改めてここ数年の作品と比べて、明らかにのめり込みやすいなあという印象。特にこういう生き残りゲームに適した脚本なのが嬉しい。このペースで1年を突っ切ってくれれば、ちゃんと伝説になれるはず。

 

 

 

暴太郎戦隊ドンブラザーズ ドン29話「とむらいとムラサメ」

先週がまさかまさかのゲストにまるっと30分使った閑話休題(しかも馬鹿みたいにクオリティが高い)だったのに対し、今週は大きく物語が進む。ソノイの葬式という無茶苦茶な引きから紡がれるのは、とにかく圧倒的な情報量と物量で殴ってくる勢いのあるストーリーだった。

 

まずはムラサメ。ジロウ登場後すぐに現れた謎の存在。内なる声「マザー」に命じられるままに行動する、ドンブラザーズの敵…なのかも分からないキャラクターだったが、27話にてソノイからその正体が明かされた。要はドン家や脳人における最終兵器であり、更に今週、獣人を倒せる唯一の存在であることも明らかに。あまり他のキャラとの接点がない彼としっかりと向き合ったのは、まさかの闇ジロウだった。

 

思えば闇ジロウ問題もほとんど解決はしていない。普段のジロウは気質こそ明るいものの、性格がかなり厄介。闇ジロウは交渉が通じない上に、負の感情に素直でドンブラザーズすらも平気で攻撃してくるので厄介。どっちかと言えば闇属性っぽいから闇ジロウと呼ばれている、ドントラボルトのジロウ。決して普段のジロウが光属性かというと、そうではない。

トラドラゴンジンの登場回にてジロウが闇ジロウを受け入れる展開こそあったが、実質その出自は保留状態。とはいえ井上脚本のドンブラザーズなので、それほどまでにここをじっくり描くかどうかは難しいところ…。そう思っていたところに今回出された「闇ジロウこそが元の人格だった」という設定。というかまず驚いたのは、ジロウの二重人格って本当に普通の二重人格だったのか、ということ。ドン家と関わりがありそうなキャラクターだったので、何かしらその設定に重要な謎が秘められているのかと思ったが、そうではないらしい。

 

素晴らしいのは誰しもが厄介としか思わず向き合ってこなかった闇ジロウが、ムラサメとの出会いでようやくその二面性を見せてくれたこと。元々ムラサメと剣を交えた時に、伝わってくる哀しみに戦うことを拒否していた闇ジロウ。今回はムラサメから彼に二重人格のことを問い、それに答える闇ジロウからは、どこか切なさすら感じられた。「前に立つ者、後ろに立つ者」という表現を、かごめかごめで演出するのも見事。力と戦いばかりを追い求める闇ジロウは、今後もう一人のジロウに取って代わられてしまうのか。それとももう一人のジロウがいなくなってしまうのか。共存するのか。そもそも今後触れられるのか…。ドンブラザーズは全く物語が読めないが、ムラサメと闇ジロウのこの会話は、お互いにとって大きな起点となっていたように思う。

 

その後、ムラサメが剣であるニンジャークソードに吸収され、休息状態に。剣を持った犬塚、ソノニ、猿原が次々と暴走していく。謎の剣によってメインキャラクターがどんどん暴走していく様は、アクションもあって見ごたえ抜群。それでいて情報量が多く、いくつもの物語が同時進行しているおかげで「暴走だ!どうしよどうしよ!」という流れに固執しないのがとても新しい。令和ライダーは3年連続で中間フォームで暴走(リバイスはちょっと違ったけど…)していたので、正直暴走は食傷気味だったのだが、見せ方次第で実は何とでもなるのかもしれない。

 

そしてソノイの葬式。買ってきたカツサンドに招待状が挟まっていたという、全く意味の分からない展開でスタートするのが本当にすごい。後はシロクマ宅配便の面々とタロウが仲良くしているのも嬉しい。タロウにとってはお供でもなくライバルでもない、貴重なつながりだと思うので。

 

ただ、カツサンドはさすがに唐突だったが、脳人の世界のディストピア観が強調される回ではあったように思う。ぬるい風呂、弱いマッサージ、味のしない食事。人間の食べ物(カツサンド)に平気で招待状を仕込むのも、人間がそれをどれだけ大切にしているか分かっていないからなのかもしれない。ソノニが恋愛を、ソノザが感情を知ろうとしていることも、ここに繋がってくるのだろうか。オーディオコメンタリーによると、元老院カツサンドを食べるくだりは脚本通りだというし、この展開によって彼らは初めて人間の文化に触れたのかもしれない。だが、それを行ったタロウもドン家の生き残り。こうした出自や価値観の違いで悲哀を強調するのは井上脚本の得意とするところなので、今後何か悲劇が生まれるような予感もある。

 

そしてソノイとのおでんのシーン。実現せず、タロウの空想の場面になってしまったのは本当に残念。でも、糸こんにゃくを説明するタロウの表情がとてもやさしくて、もうそれだけで泣いてしまった。だからこそ、ソノイの空っぽの鎧と戦わされたことは、本当につらかっただろう。そして元老院の思惑なのか、力を奪われるタロウ。その力はソノイの遺体へと捧げられ、目を覚ましたように思えたが、元老院が怪しげな組織であることを考えると、素直に復活したとは考えにくい。というか、タロウの力で復活したソノイという文脈が刺さりすぎる。タロウは多分騙さなくてもソノイを復活させただろう。

 

次々と触れた者を暴走させてしまうニンジャークソード。しかし力を失ったタロウが触れると、なんと力が復活。あっさりと爆竜鬼を倒してしまう。きっと出自か何かが関係しているのだろうけど、あまりにスピーディーな展開でもう笑うしかない。ドンブラザーズ、進まない時は本当に進まないが、進むときは一ヶ月分くらい進むので全く目が離せない作品である。トータル的には毎週縦軸を動かしている感じになるのだろうか。だが、その緩急のせいで視聴感が本当に新鮮。

 

来週はいよいよ獣人撃退のために脳人とドンブラザーズが共闘。呉越同舟はここで使うべき言葉だろうに…。加えて犬塚が美穂ちゃんの真実を知るようで、本当に辛い。辛すぎる。遂にこの時が訪れてしまったのか…。

美穂ちゃんのことも未だ謎だらけなので、どれくらい話が動くのか、期待がかかる。ソノイの葬式で目を引いておいてこれだけのことをやる作品なので、きっと期待以上のものを見せてくれるはずだ。

 

いや、とにかく今週はギーツもドンブラも面白すぎて…。毎週お互いにこのクオリティだったら本当に幸せである。