先週の無印に引き続き、『デジモンアドベンチャー02』を完走。まさか1週間で観られるとは思っていなかった。このデジモン全作マラソン、ペースとしては1日4話ほどで9月末までの予定だったのだけれど、2倍の速度で02を終えてしまったのでこの調子でどんどん進めていきたい。ただ『02』をこんなにも早いペースで完走できたのは、偏に自分がこの作品を既に何周もしているおかげだろう。実は『02』が自分の世代ど真ん中であり、ビデオに録画したものを小さい頃からもう数えきれないほど観ている。そのためこの1週間は鑑賞というより記憶を鮮明にする作業のような時間だった。ただ無印からシームレスに観ると、色々と粗が多かったり、無印派の人に怒られても仕方ないかもしれないと、妥協すべき点もある気がしてくる。それでも無印に負けず劣らずの人気を博しているのは、この作品に無印にはない独自性が存在しているからであろう。無印はホームシックの少年達が旅の中でそれぞれ絆を深め合う切ない物語だったが、『02』には王道のホビーアニメ要素が散りばめられ、いわゆる「熱い展開」が多いように思う。その中で描かれるのは闇に囚われた者達、すなわち、一乗寺賢、ブラックウォーグレイモン、及川の3人をはじめとした後悔と前進。ホビアニの王道展開とは離れた作劇の無印が善悪二元論をベースにしていたのに対し、ホビアニのメインロードを突っ走るこの『02』は人の人生には闇も光もあるということを教えてくれる。選ばれし子どもたちが特別なのではない。夢や希望を抱いて前に進むことで人は特別になることができるのである。キャラクターの個性を象徴する「紋章」の力が失われたこの続編だからこそ、善意も悪意も含めての人間の個性を語ることに説得力が生まれている。
上にリンクを貼った無印感想ではデビモン編エテモン編というように各ボスキャラをなぞっていく形で感想を書いていったので今回もその形式を取りたい。
まずはデジモンカイザー編。全50話を完走した後だとパーマにマント、そして妙なサングラスという一乗寺賢の姿が滑稽に見えてしまう。デジモンカイザーは無印には存在しなかった「悪の選ばれし子ども」だが、パートナーとして常に傍にいるワームモンの健気さもあって、割と序盤から追加戦士枠にしか見えないキャラクターになっている。昔はあまり思わなかったのだが、改めて観ると『02』の序盤はかなりシステマティックである。ダークタワーを倒すという各話毎のゴールが設定されているため、物語がフォーマット化されていて非常に観やすい。反面、ゴールが決まっているがゆえに常に選ばれし子どもたちが勝利し、デジモンカイザーの計画が崩れるという流れが続き少々退屈でもあった。何より無印で子どもたちとデジモンとの別れをあんなに劇的に描きながら、速攻で皆が再会してしまうというのが惜しい。作劇上仕方ないことではあるのだが、あの感動は何だったんだろう…と思ってしまうのだ。もちろん子どもたちにとってもデジモン達にとっても嬉しいことではあるのだろうけど。しかも前作のメンバーはダークタワーの影響によってタケルとヒカリ以外は戦うことすらできない。先輩として登場するにも関わらず、大した活躍もできないというのは少々残念である。ついでに言うと私は洗脳展開がかなり苦手なのだ。なぜなら大体正気に戻るので…。「お願い戻って…」みたいな展開にあんまり魅力を感じることができず、正直アグモンがカイザーに利用される辺りまでは今回は面白いと思えなかった。ただフレイドラモンやライドラモンのデザインがかなり好きなので、バトル面での高揚感で何とか凌いでいたような形である。
などといきなりネガティブな感想になってしまったが、その直後の第12話からかなり楽しく観ることができた。この回は浦沢義雄脚本なのだが、小さい頃から妙に印象に残っている。思えば『02』の浦沢回は結構楽しんで観ていた記憶があり、今自分が浦沢脚本を好きなことにはこの『02』が関連しているのかもしれないと気付いた。第12話はデジモンカイザーとの戦いが一段落し、閑話休題といった印象のギャグ回。続く第13話はファンの間でもよく話題に上がるダゴモン回だ。脚本はクトゥルフをベースとした物語を得意とする小中千昭さん。この流れで次作『デジモンテイマーズ』のメインライターにも就任する。『02』の担当回はこの1回だが、デジタルワールドとはまた別の世界、そしてデジモンとはまた別の謎の存在を描き恐怖を掻き立てるこのエピソードは子供の頃からかなり異質に思っていた。改めて観るとこの回にて登場したダゴモンの海はその後も何度も登場し、1回きりの登板ながら異彩を放ちつつ世界観を強固にしていたことが分かる。続くシュリモン回2連続、そしてサブマリモン回と、デジモンカイザーがキメラモン開発に忙しくなったことでメインの5人を掘り下げられる上に自由度の高いエピソードがどんどん出てくるのだが、この辺りで一旦フォーマットがリセットされているような気がした。脚本に自由度が生まれており、それぞれのエピソードの個性が際立っているのだ。特にサブマリモン回の第16話は名エピソードではないだろうか。皆を助けるためとはいえ人に嘘をついてしまった伊織が自分に誠実の紋章は似合わないと悩み、紋章の持ち主だった丈が「人を助ける嘘もある」と彼に優しく言葉をかける。先輩から紋章を受け継ぐエピソードとしても屈指の出来であり、何よりこの辺りから既に伊織の悩み癖のようなものが出ているのも興味深い。正しい行いをしたいと願うからこそ、正義に悩み、自身の在り方に悩み続ける伊織のキャラクター性は、終盤の及川との掛け合いで更に感動を生む。
そしていよいよキメラモン編に突入。僕の作った最強のデジモンという典型的悪役ムーブをかました上にキメラモンを暴走させてしまうデジモンカイザー。この辺りまで来るともう一乗寺賢としての顔が丸見えであり、その周りを見下したがる子供っぽさが愛おしくなってくる。しかし何よりワームモンであろう。パートナーデジモンなんて言い方では抑えられないほどに賢に一途に愛情を注いできた聖母。賢を正しい道に進ませることよりも、彼を傍で見守り続けることを選んだ勇者である。しかしその思いも限界に達し、遂に大輔達に助けを請い、マグナモンによって無事にキメラモンは倒される。キメラモンを失いデジモンカイザーから一乗寺賢へと戻る彼の腕の中で命を落とすワームモン。涙なしには観られない素晴らしい回だった。賢の紋章は優しさ。それが彼の個性であるはずなのに、いつの間にかそれを見失ってデジモンをいたぶるデジモンカイザーになってしまった。他の誰よりも自分を心配してくれたワームモンに辛く当たってきてしまったこと、そして彼を失ってしまったこと。賢が抱いたその後悔が痛いほど伝わってくるのだ。実に2クールを費やしたデジモンカイザー編はここで幕を閉じ、一乗寺賢は以降贖罪を果たすために戦いに身を投じることになる。
第23話では大輔達が一切登場せず、一乗寺賢がいかにしてデジモンカイザーになったかが語られる。何でもできる天才の兄・治を持ち、兄ばかりを褒める両親の姿に悲しみを募らせていた賢。部屋に突如現れたデジヴァイスも治が自分のものだとして引き出しに閉まってしまう。しかし選ばれていたのは賢だった。賢はこっそりワームモンと共に冒険の旅に出かけていたのである。彼がデジタルワールドから戻ったところを目撃し、嫉妬する治。賢の中に確かに存在していたシャボン玉を褒めてくれた素敵な兄の姿は消滅し、賢を虐げるようになる。その治の姿が賢のデジモンカイザーとしての姿にそっくりなのも辛い。そんな治は交通事故で命を落とし、両親は悲しみに暮れる。虐げられていたにも関わらず、賢は「兄さんなんていなくなればいい」と言ってしまったことを後悔しつつ、その言葉が現実となったことと及川からのメールがトリガーとなりデジモンカイザーが誕生する。丸々1話を費やして賢1人のエピソードをやるということは、それだけ制作陣も賢の物語に注力していたのだろう。優しさの紋章を持つ少年がいかにして闇に染まったか。辛い家庭環境と些細なきっかけが、彼の心の闇を肥大化させてしまっていたのである。そして賢はそのことを悔やみ、しばらくは大輔達とも関わらず、一人でダークタワーの破壊に勤しむことになる。終盤、ベリアルヴァンデモンによって見せられた幻の中で、治に許される賢。それは賢の願望でもあったのだろう。自分の罪が全て許される世界。兄が自分を肯定してくれる世界。しかしそれは真実ではない。賢は自分の行ってきたことを反省して生きていかなければならないのだ。それを決意して生きることの苦しみは、仲間達が軽減してくれる。賢とは正反対に、くよくよ悩むことが一切ない大輔の姿が彼の支えとなっているのだろう。
なぜデジモンカイザーに選ばれるのが自分でなければならなかったのか。アルケニモンや及川に対して、賢は度々この問いを投げ掛ける。しかしそれはアルケニモンの答えの通り、「誰でもよかった」のだ。もちろん暗黒の種のことやデジタルワールドを既に冒険していたこと、選ばれし子どもの1人であったことなどは関係しているが、それも偶然に過ぎない。彼は偶然の連続で及川に選ばれてしまったのだ。「誰でもよかった」という答えは、言うなれば心の闇は誰しもが持ち合わせてしまうものであるということなのだろう。無印には存在しなかったデジモンカイザーという存在。人は簡単に歪んでしまうし、生き方は容易く曲げられてしまう。しかしそれでも生きていくことに意味があり、罪は償っていけるという強いメッセージ。賢を通してのこのテーマこそが、『02』最大の魅力であると言えるだろう。
そんな賢と対の関係にあるのが主人公の大輔である。先にも少し触れたが、彼の善性、そして人を信じるまっすぐな気持ちは賢にはない資質であり、同時に賢に最も必要なパートナーとしての個性なのである。多分大輔自身の紋章があるとしたら、「信頼」とかになるのではないだろうか。それくらい本宮大輔は、人の力を信じている。デジモンカイザーから元に戻った賢を前にして、京や伊織がまだ彼を受け入れられないのに対し、大輔はあっさりと賢を仲間に誘う。戻ったんだからいいんだろう、と。それは短絡的であると言えなくもないが、その一言が賢にとっては救いなのだ。大輔は個性が際立つようなエピソードこそ少ないものの(エクスブイモン初登場回でさえ浦沢脚本なので…)、他のメンバーとの掛け合いの中でその個性を輝かせる。悩むこともしない、面倒なことを考えることもしない彼のまっすぐな心は、闇を抱える人々にとって時に光となるのだ。だからこそ、パイルドラモンというジョグレス体の登場が胸を打つ。ワームモンが賢の隣に寄り添って共に歩んでくれる存在だとするならば、大輔は賢の前に立って進むべき道を教えてくれる存在なのだろう。きっと賢にとって大輔はそれほどまでに眩しいはずだ。悩み、戸惑い、立ち止まる。無印から続くシリーズの登場人物達の既定路線を、大輔はぴょんと簡単に飛び越えてくる。とにかく先に進む、突っ走るという考え方の持ち主なのだ。誰よりも心が強く、たくましい。そんな彼のパートナーであるブイモンもお調子者ではあるものの、立ち止まったりすることはほとんどない。常に大輔の隣でバカ騒ぎをできる…いやむしろ大輔よりも大人な考え方を持てる存在に見える。後述するが、ブラックウォーグレイモンに対して戦いの後にかけた言葉も、凄く的確な上に感動を誘う。他の選ばれし子どもたちは視聴者の共感を得るキャラクターだが、大輔は他とは違い「憧れ」を抱けるキャラクターなのではないだろうか。人を照らす光のように眩しい新たな主人公。無印の太一や他のメンバーとも異なり、シリーズ中でも異色の男と言えるかもしれない。
続いては、ブラックウォーグレイモンについて。
アルケニモンによって100本のダークタワーから生まれた究極体のデジモン。しかし生まれた時から自分の存在意義に悩み続け、命令も聞かずに暴走し続ける。彼もまた、闇に人生を狂わされた存在と言えるだろう。アルケニモンとマミーモンは当初こそ謎のお存在として怪しげな魅力を放っていたが、段々と可愛げも生まれロケット団的な立ち位置になっていく。それに対しブラックウォーグレイモンの強さは圧倒的であり、選ばれし子どもたちが束になっても彼に勝つことは難しかった。戦うことを求めた彼はチンロンモンと会うためにデジタルワールドと現実世界の秩序を保つホーリーストーンを破壊し続ける。そんな彼が行き着いた目的は、戦いの中で死ぬことだった。自分の存在意義に悩み続けた彼が求めたのはその悩みを死をもってして終わらせることだったのである。
闇に染まった一乗寺賢とは異なり、元々闇から生まれたブラックウォーグレイモン。ダークタワーでしかないため他のデジモンとも立場が異なり、ダークタワーから生まれた他の存在には意思がないため思いを分かち合えない。孤独に苦しむ彼はその苦しみから逃れようと死を望んでいたのだ。彼を救おうという流れの中に無関係なエピソードが挿入されてしまったりと、少々扱いが勿体ないという問題はあるのだが、後半を彩る素晴らしいキャラクターであったことは間違いない。一乗寺賢が改心という形で光を取り戻したのに対し、ブラックウォーグレイモンのエピソードは出自がどうあろうと人は正しくなれるという希望を示してくれる。死を望んだブラックウォーグレイモンに対し、決戦の後にワームモンとアグモンとブイモンがそれぞれ言葉を投げ掛ける。ワームモンは死ではなく生きていくことの辛さや苦しさを説いた。それは彼の隣にいる賢の姿を重ねたのかもしれない。自分の犯した罪の大きさを認め、それを償うために必死になっている彼のパートナーデジモンからしたら、悩むことから解放されるために死を選ぶという杜撰な考えは激怒に値するだろう。続いてアグモンは「僕がしてきたことの全てが僕の生きた証拠」だと言う。それは正に無印で語られたテーマであり、辛く苦しいように思えた突然の冒険だった物語が、いつしかかけがえのない絆を育んだ時間に変わったことを意味しているのだろう。最後にブイモンは「食って寝て仲間と楽しくやれれば最高だよ。でも手を抜かない」と。ブイモンは生きることにとにかく前向きであり、それが日々の充実に繋がると自分の言葉で語ってくれるのだ。全員が早口なのが気になるが、その言葉がきっかけとなったのかブラックウォーグレイモンは気持ちを新たにする。生きることは簡単ではない。辛いこともある。しかしそれも含めて生きるということなのだ。同じ出自の存在を持たず孤独であっても、心がまるで満たされなくても、生きていくことに価値は生まれる。それを3体は教えてくれた。その次の回、ブラックウォーグレイモンは及川を止めるために動き出すが、覚醒した及川(の中のベリアルヴァンデモン)から伊織の祖父を守るために負傷し、死を悟って人間世界とデジタルワールドのゲートを閉じるために自ら犠牲となる。人生に価値を見出そうとした彼の最期としては非常にあっけないのが残念な上、物語が及川の正体に向かって動き出していた最中のために、彼の決意としてもあまり盛り上がらなかったのが勿体ない。もう少し早く生き方を決めていてもよかったのかもしれない。だが、ブラックウォーグレイモンという存在が『02』において欠かせないファクターであることは間違いないだろう。
最後に及川悠紀夫である。唯一の親友である伊織の父親と共に幼い頃からデジタルワールドに行くことを夢見ていた青年。しかし進展はないままに大人になり、親友を亡くした上にデジタルワールドへ向かう8人の子どもたちを見ていることしかできない無力さからヴァンデモンにつけこまれた哀れな男である。彼もまた、闇に翻弄されてしまった人間の1人と言えるだろう。元々は純粋な少年であった彼は、胸に巣食った孤独を利用され子どもたちを平気で利用するほどにまでなってしまった。デジモンを道具として扱うようなことこそないものの、目的のためなら手段を選ばないという意味で初代デジモンカイザーとさえ言えるかもしれない。当初はその不気味な風貌(それなのに劇中では普通の男と言われる)もあって謎の男という風格を醸し出していたが、伊織の父親とのエピソードが明かされると突然人間味が出てくる。そう、彼は誰よりも純粋で夢に一途な男だったのだ。彼は道を違えたわけでもないし、踏み外したわけでもない。ただ悲しかっただけである。孤独に耐えられなかっただけである。そこをつけこまれ、元凶として踊らされてしまい、最終的には命を落とすことになる。憎めない悪役どころか憎む理由が1つも見当たらないくらいに彼の人生は切ない。しかし最後、彼はようやくデジタルワールドに到着し自分のパートナーデジモンと再会を果たす。こんなに美しい最期があるだろうか。
そんな彼を支えるのが伊織というのも素晴らしい。思えば『02』にて新たに登場した京と伊織はやはり無印のメンバーよりも割を食っている感があり、個人回こそあるものの縦軸を進めるようなエピソードではやはり脇に置かれてしまう印象があった。そこに突然切り込んでくる、及川と伊織の父親が幼馴染だったという事実。果てには伊織の祖父までもが及川の前に飛び出してくる。思えば伊織は常に正しさについて悩み続けていた。それはサブマリモンの回でもそうだし、賢が仲間になろうとした時も彼を許すことができない自分を責め続けていたのだ。タケルとのジョグレスに関しても、彼の気持ちを汲むことが出来ず時間がかかった。伊織も賢と同様、正しさに悩む少年なのである。そんな伊織は最後まで及川を心配する。悪人であろうと改心できると彼が気付きを得る上で及川の存在は欠かすことができない。賢を認めた伊織にとっては、悪人に手を差し伸べることこそが正しい行いなのだ。大輔は根っからの善人であるがゆえに簡単に人を認めることができる器の大きな男だが、伊織は全50話を掛けてようやくそこに辿り着く。もしや『02』の縦軸を担うのはこの伊織なんじゃないかというくらいの大役を担わされている。
また、何より及川の存在は大人になってこの作品を観た時にとにかく沁みる。彼の孤独は、選ばれし子どもたちになれず普通の会社員として過ごしている自分を見ているようで心が痛むし、そんな彼がパートナーデジモンと再会し救われる様が強く胸を打つのだ。余談だが、『02』のBlu-ray BOXのパッケージには選ばれし子どもたちが並んでおり、その最後尾には及川が描かれている。このデザイン、あまりに素晴らしく最初に観た時は思わず泣き崩れてしまった。
デジモンカイザーとして邪知暴虐の限りを尽くした賢の贖罪、境遇を共にできる仲間がおらず戦いの中に意味を見出そうとしていたブラックウォーグレイモンの変化、理解者を失い全てから見放されたように感じてしまった及川の孤独。そうした、闇に人生を狂わされてしまった者達の再生の物語こそが、この『02』の本質なのではないだろうか。闇は誰の心の中にも存在する。人は簡単に闇に堕ちてしまう。それは純粋に夢を追いかけた及川でも、優しさの紋章を持っていた賢であっても変わらない。しかしその過ちは正すことができる。生きることはその過ちをも抱えて前に進むことだと、『02』は教えてくれる。そしてそんな過ちを犯した人々が生きていけるのは、大輔のような眩しさを放つ存在のおかげなのだろう。伊織も50話を掛けてそこに辿り着いた。人を認めるということの素晴らしさ、前を向くことの美しさをこの『デジモンアドベンチャー02』は訴えているのだ。
無印に比べると涙を誘うようなエピソードは少ないかもしれない。どこか切なさを覚える無印の物語と違い、『02』は熱い物語が展開されていく。更に言うと設定が多いおかげで違和感が生まれてしまっている点もある。2年分の物語をうまくまとめあげた作品ではないかもしれない。それでも、闇に抗う者達の物語として素晴らしい結末を迎えたと言えるのではないだろうか。支え合うことの大切さを説いた無印から、前を向くことと認めることを教えてくれる『02』へと、物語自体も前に進んでいく。思い出補正に頼らずとも、充分に面白いと感じられる作品だった。
次作の『デジモンテイマーズ』は後半以降の内容を結構忘れてしまっているので楽しみ。